例えば、セールスフォース・ドットコムでは、お互いを家族のように大切にする「Ohana(ハワイ語で家族)」というカルチャーがあり、これにフィットするかどうかを重視して採用活動を行っている。また、グーグルでは選考時に、あいまいで不明瞭な環境を楽しみつつ、解決方法を見つけられる自主性を持つ「グーグルらしさ(グーグリネス)」があるかどうかを重視しているという。
このように欧米の優良企業も、選考時から候補者の自社へのカルチャーフィットも大事にすることで、安心して働けるコミュニティを形成しようとしているわけだ。
そして実は日本でも、大手ITベンチャー企業を中心に、すでに同様の体制が整えられている企業が出てきているという。
「日本の優良ITベンチャーは、すでにジョブ型での採用と運用を行っていると同時に、メンバーシップ型でもある。こうした企業に、(ジョブ型とメンバーシップ型の)どちらがいいかという疑問を投げかけること自体、ナンセンスだろう」(古野所長)
メンバーシップ型の弊害がなければ
ジョブ型導入の必要はない
「日本の大企業の人事担当者から、『当社でもジョブ型を導入したほうがいいか?』などと尋ねられることがあるが、そもそも何が問題になっているのか、問い直すことが多い。例えば、年功序列型の人事で、働いていないのに高い給料をもらっている人がいる。つまり、先ほど挙げた、メンバーシップ型のフリーライド(温情人事)の問題だ。高い給料に見合った仕事を提供できれば、制度を変えなくても問題は解決できる。それでもうまくいかなければ、仕事に見合った報酬を提供できるような人事制度に改定すればいい。新たにジョブ型ということを持ち出す必要はない。
変化が著しい現代において、理想は個人がプロフェッショナルとして働きながらも、メンバーが協働すること。これからの時代に、メンバーがやりがいを持って仕事に没頭し、効果的に協働するためには、ジョブ型・メンバーシップ型のどちらも必要だ」(古野所長)
プロスポーツ選手は、それぞれがプロとして役割を全うしながらも、チームのために協働することが求められている。これからのビジネスパーソンは同じような意識を持つことが重要であり、企業側には自社に合った形で、メンバーシップ型とジョブ型のちょうどいいハイブリッド型を模索することが求められている。