所得控除のメリットは思ったより大きい

 加えて、日本の所得税が累進課税であることも影響している 。所得が高くなるほど税率が高くなるが、それにつれて控除額も増えていく。例えば、課税所得が190万円だと税率は5%なので、所得税額は9万5000円。課税所得が200万円だと、税率は10%だが、控除額が9万7500円あるので、税額は10万2500円となる。単純に割り算をすると、自分の税率は5%強だと誤解してしまいそうだが、そうではないので注意しよう。

 毎月1万円だけiDeCoで積み立てたことで、課税所得が200万円から199万円に減ると、税額は199万円の10%から9万7500円引くので、10万1500円となり、税金は1000円減る。これは、投資した金額の10%に相当する。

 余談だが、この10%のことを「限界税率」と呼ぶ。実際には、これに住民税率を加えた約20%が限界税率であり、毎月1万円のiDeCoの積み立てにより、税額は毎月約2000円も節約できる。

 若者は、このメリットが60歳になるまでずっと受けられるので、ぜひ加入しよう。中高年のサラリーマンは、「短い期間しかiDeCoに加入できないので、メリットは小さい」と考えてiDeCoへの加入を見送る人もいるだろうが、年功序列賃金制で高い給料をもらっているサラリーマンは、限界税率も高い場合が多いので、あきらめずに加入を検討してみよう。

 ちなみに、「所得控除は魅力的だが、投資は嫌だ」という人は、iDeCoに拠出した資金を定期預金などで運用すればよい。株価の値下がりリスクを負うことなく、所得控除のメリットだけを享受できるからだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係が無い。また、年金関係は規定が複雑であるため、細部は必ずしも厳密ではない。