中国を取り巻く変異株

 感染力の強い変異株には、国境という人為的な境界線は通用しない。

 中国は今、インドを発生源とする変異株に大騒ぎで、「インドの感染拡大が中国に伝播するのは時間の問題だ」と懸念する “中国人インドウォッチャー”もいる。“アジアで最も安全な中国”に避難民が押し寄せてくる事態を想像しているためでもある。

 そんな中、中国疾病予防コントロールセンターの専門家は「中国にそれほど影響をもたらすものではない」と楽観視している。国民を不安がらせないといった配慮もあるだろうが、空港や港湾などの水際で、「PCR検査」や「抗体検査」「14日間の集中隔離」、さらに「7日間の自宅での健康観察」など「これだけ厳重な措置を講じている」といった自信があるからだ。

 だが、中国への入国は必ずしも空港や港湾からとは限らない。雲南省とミャンマーの国境は尾根線が国境線を成していることが多いが、国境はあっても両側の国における居住者は同じ民族というケースは珍しくない。このようなアジアの緩い国境警備体制において、避難民がもたらす感染拡大を封じ込められるかは未知数だ。

 実際、雲南省瑞麗市では、3月29日にPCR検査でミャンマー籍の男性が陽性と判定された。「政変による混乱が発生したミャンマーから、避難民が川を泳いで逃げ込んだ」ともいわれ、同市では外部からもたらされたコロナウイルスで、新規感染者が増加した時期があった。こうしたことを直近で経験しているだけに、一部の中国人は「インドの避難民も国境をすり抜け中国に逃亡してくるのではないか」と強い懸念を示しているのだ。