「一帯一路」構想にも暗い影

 インドの変異株拡大の影響は「一帯一路」構想にも及ぶ。

 というのも、中国が最重要視する協力国といえばパキスタンやバングラデシュ、ミャンマーをはじめとする南アジアや東南アジアの国々だが、このまま終息を見なければ、プロジェクト計画が大幅に狂う可能性もあるのだ。

 医療強国を目指す中国は、「健康のシルクロード」を掲げて、途上国を中心にワクチンや医療用品の支援を熱心に行ってきたが、今回のインドの感染爆発により対象となる支援国は数を増やしそうだ。医療用品のみならず、場合によっては人的支援も検討しなければならないだろう。サプライチェーンも大きく影響される。インドは中国のスマホメーカーにとって重要な戦略拠点だが、すでにその供給体制にも累が及んでいる。

 “独り勝ち”といわれた中国も、周辺国で果てしなく続くコロナウイルスの感染拡大によって消耗戦に引きずり込まれる気配だ。

 さて、当コラムは「China Report」というタイトルがあるので、本来ならばここで筆を置くところだが、最後に、日本の状況についても言及したい。日本も変異株による感染拡大を封じ込めることができなければ、第4の山を形成し、過去最悪の事態に陥ってしまうだろう。現在、東京オリンピック・パラリンピックの是非が取り沙汰されているが、周辺のアジアの国々は混乱と苦しみの真っただ中にある。

 こうした状況でゲスト国が安全な状態で参加ができ、またホスト国が安全な状態でゲストを受け入れられるとはとても考えにくい。日本に今、必要なのは「山を下りる勇気」ではないだろうか。日本政府には責任ある決断が迫られている。