変異種の動向次第では
世界の状況は「振り出し」に戻る

 ところが、このようなアメリカ経済、イギリス経済の復活に関して一つ大きな不安材料があります。まだ医学的にはわかっていないことが多いので、ここでは不安と表現させていただきますが、それは「インド発の変異種」です。

 とにかく世界経済が2021年に持ち直すというシナリオの前提は、ワクチン接種による新型コロナの収束です。ところが、変異種にはワクチンが効かない可能性がある。

 もしワクチンが効かない変異種が、それまでのウイルスよりも悪性の度合いが高ければ状況はまた振り出しに戻ります。もちろん変異種に対応したワクチンが開発されることになるとは思いますが、また「新たな我慢の1年間」が始まることになるわけです。

 そう考えれば、日本に限らず世界各国において水際対策は重要です。ところが皆さんも報道でご存じのとおり、すでに国内でも、インド発の変異種が数件ではありますが発見されています。そしてその背景として、1日300人規模で入国後の待機規則違反が発生しているという報道があります。

 日本政府の対応としては、このような違反者に警告メールを送信しているとのこと。この対応は、水際対策が日本社会の未来のための2番目に重要な頑張りどころだということがわかっていないとしか思えないゆるさです。

 繰り返しになりますが、日本人なら「他の人も我慢しているので、入国後14日間は我慢して自宅待機してください」といえばいうことを聞きますが、これは日本だけの文化です。外国人の場合、罰則のない法律や規則は破ることをいとわない文化の国が少なくない。つまり、今の入国ルールには国民を守れる実効性がないわけです。

 話をまとめます。今、新型コロナについてとにかく気がめいる日々が続いていますが、わたしたち国民が監視しておくべきポイントは二つだけ。一つは高齢者へのワクチン接種スケジュールが、政府の言うとおり7月末に本当に終わるかどうか。もう一つはこの夏に予想される第5波において、インド変異種が増加しないかどうか。

 国民の憤る気持ちはわかりますが、本当に怒るべきは、この二つの監視ポイントで国民が裏切られたときなのだと考えて、それ以外の日々のフラストレーションについては、気持ちを抑えるべき我慢のタイミングではないでしょうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)