前述の通り、体操やフィギュアスケートは撮影禁止という「強硬手段」に打って出たが、ほかはほとんどが、競技会場の見回りや撮影を許可制にするなどが精いっぱい。対策を取っても、それをかいくぐろうとする撮影者といたちごっこが続いているのが現状だ。

 前述の写真部デスクによれば、「以前、競技団体に取材した際に聞いた話」として、将来が有望とされていた高校生が、卑猥なコメントを付けられた自分の動画があることを知人に指摘され、ショックで競技を辞めたケースがあったと明かした。

 ロイター通信によると先月、体操の欧州選手権大会で、ドイツのチームがレオタードではなく、足首まで覆う「ボディースーツ」で演技し、注目された。ドイツの競技団体は「画像や動画の拡散に抗議する意味を込めた」と説明。こうした被害は日本だけではないことを示唆しているが、アスリートがこうしたことを危惧する状況は、やはり「おかしい」と言わざるを得ない。

 海外では韓国やフランスなどで、性的な目的での無断撮影や拡散が法律で禁じられている。19年には韓国で開催された水泳の世界選手権大会で、女性選手を盗撮したとして、30代の日本人男性が摘発された。

 日本でも法務省の性犯罪に関する刑事法検討会で「盗撮罪」創設が議論されているが、チアリーディングなど公開の場で「見せる」ことを目的とした競技や、純粋に競技を撮影したいという善意のファンまで規制するのか――といった線引きが難しい問題もある。

 しかし、女性アスリートが安心して競技に専念できるよう、法整備が必要なのは論をまたないだろう。