「最低限の小さい行動」を習慣にする

 時間──。それは十分にあったためしがなく、私たちはいつも「もっと時間があれば」と嘆いている。車の中でしけったハンバーガーを食べ、子どもたちとビーチで過ごしながら電話会議に参加する。それもこれも時間に追われているからだ。


 そのプレッシャーがもたらすのは、焦燥感だ。いつになっても「時間がない」と焦り続け、「前向きな習慣を身につける余裕なんてない」とあきらめ、変化に対する拒否反応を示している。「1日30分の運動?」「毎晩健康的な夕食をつくる?」「毎日、感謝の気持ちを日記に綴る?」とんでもない。そんな時間がどこにある?

 そんな人生を楽にするには、時間のかからない「小さいこと」から始めるしかない。

 本書の方法「タイニー・ハビット」では、30秒もかからずにできる「小さい行動」に的を絞る

 小さい行動はすぐに生活に取り入れることができ、やがて自然と大きく成長していく。小さいことから始めれば、時間的な負担を気にせず、大きな変化への第一歩を踏み出すことができるのだ。


 
タイニー・ハビットでは、「3つのとても小さい行動」から始めることを推奨している。あるいはたった1つでもかまわない。

 ストレスが多く、時間がない人ほど、この方法は適している。健康的な習慣を身につけたいとどんなに願っても、大きなことから始めると継続するのが難しく、新しい習慣はなかなか定着しない。人生において、小さいことは最良の選択肢であるだけでなく、唯一の選択肢といえるかもしれない。

「いますぐ」始められる

 小さいことは、あなたが自分自身と人生に向き合えるようにサポートしてくれる。


 小さいことは、いますぐ始められる。人生が絶望的な悪循環に陥っているときでも、まずまず順調だがストレスが大きいようなときでも、あなたの現状に合わせられるのだ。

 誰もがそれぞれ、対処すべき生活環境や望ましくない思考のあり方、前進を阻止する心理的な癖を抱えている。それについて失望し、情けなく思うのも、小さい習慣を実践してその流れを断ち切るのも、あなた次第だ。

 本書では、具体的な習慣を推奨するつもりはない。私が伝えるのは、あなたが望む何らかの習慣を身につける方法だ。習慣を選ぶのはあなただ。

 だが、ここでは例外として、ある新しい習慣を練習してみよう。毎朝起きたら最初にする、とても簡単なことだ。

 3秒くらいしかかからないこの習慣を、私は「マウイ習慣」と呼んでいる。

 朝起きて床に足をつけたら、まずこう言ってみよう。


「今日は素晴らしい日になる」

 ただそれだけを声に出して言い、楽観的で前向きな気分になるように心がける。

 タイニー・ハビットの「レシピカード」のフォーマットで表現するなら、下図のようになる。

 私は何年ものあいだ、大勢の人たちにマウイ習慣を推奨し、素晴らしい成果を確認してきた。もちろん、私の人生にも効果があった。マウイ習慣を実践すれば、よりよい未来に向けてすぐに、そしてほとんど努力なしにスタートを切ることができるだろう。


 人によっては、「今日は最高の日になるぞ」というように少し表現を変えている。自分にとって効果的に思える言葉があるなら、自由にアレンジしてほしい。

 また、「朝起きて鏡に向かったとき、決まった言葉を口にする」など、タイミングをアレンジしてもいい。もっとも、これは私の場合はまったくうまくいかないが(そもそも鏡は見ないようにしているからだ。困ったものだ!)。

 私は毎朝マウイ習慣を実践するとき、声を出す前に少し間を置いている。起きた瞬間はぼんやりしているし、言葉の意味をしっかりと感じたいからだ。

 もし「そんな習慣を実践したくらいで素晴らしい日になるわけがない」と思っていても、ぜひ声に出してやってみてほしい。

 私はひどく疲れていたり、打ちのめされていたり、その日に心配事が待ち受けていたりする朝でも、欠かさず口にしている。ベッドの端に座った瞬間、楽天的になろうと努めている。

 それでも空々しく感じるときは、セリフと言い方を少し調整して、こんなふうに言う。

「今日は素晴らしい日になるぞ、少しくらいは

 不思議なことに、私にとっては最悪の日でさえ効き目がある。心配事が待ち受けている日でも、この言葉を口にすると、実際にいい一日を過ごせる扉がほんの少しだけ開く気がする。

 たとえ疑わしそうな声で言ったとしても、効果はある。実際、私自身、ほとんどの日はほんの少し疑わしい気持ちで言っている。

 マウイ習慣については、毎朝3秒でできる簡単な習慣の練習だと思って実践してみよう。

 そうすれば、第一歩を踏み出すことがどんなに簡単か実感でき、行動変化における唯一最大のスキル、つまり自己肯定感の習得に役立つはずだ。

(本原稿は『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(BJ・フォッグ著、須川綾子訳)からの抜粋です)