スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。
そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。
全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長のデビュー作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となり、ロングセラーとなっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と語った本とは一体なにか。
一方、全米で熱狂的なファンをつくり、「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」で「Time’s Best Inventions of 2020」を受賞した塚田英次郎氏。日本上陸直前の「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」はどうやって生まれたのか。
カリフォルニアベイエリアで初対談が行われた模様を特別にお届けする。(これまでの人気連載はこちら)。(構成・藤澤宗生)

ハリウッドセレブが絶賛!<br />「TIME's Best Inventions of 2020」<br />受賞!「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」<br />を発明した日本人CEOが語る<br />大企業の40代、50代が起業すると<br />日本がめちゃ面白くなる理由Photo: Adobe Stock

極意1:仲間を探せ。

ハリウッドセレブが絶賛!<br />「TIME's Best Inventions of 2020」<br />受賞!「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」<br />を発明した日本人CEOが語る<br />大企業の40代、50代が起業すると<br />日本がめちゃ面白くなる理由

星友啓(以下、星):前回はコンセプトメイキングについて伺いました。

今回はコンセプトを商品の形にしていく際に大切なことについてお聞きしたいと思います。

塚田英次郎(以下、塚田):商品のコンセプトを発見し、誰に向けたどんな商品で、それによってどういう未来をつくりたいかという作戦を立てたとしても、私はデザイナーではないので、一人では形にできません。

「いけるんじゃないか」という創業者の直感を実現させるには、一緒にやってくれる仲間が必要です。プロダクトデザイナーやエンジニアを口説いて仲間にしていかなければなりません。

ハリウッドセレブが絶賛!<br />「TIME's Best Inventions of 2020」<br />受賞!「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」<br />を発明した日本人CEOが語る<br />大企業の40代、50代が起業すると<br />日本がめちゃ面白くなる理由塚田英次郎(つかだ・えいじろう)
1975年生まれ。東京大学卒業後、サントリー株式会社入社。新商品開発を担当し、「DAKARA」や「Gokuri」などのヒット商品を生みだす。
その後、米国スタンフォード大学経営大学院(MBA)へ留学。修了後は日米で茶飲料事業に12年間携わり、「サントリー烏龍茶」「サントリー緑茶伊右衛門」を担当。「サントリー緑茶 伊右衛門 特茶(特定保健用食品)」を開発。アメリカでは「Stonemill Matcha」を立ち上げ、抹茶カフェ事業を開始。
2019年、サントリーを退職。アメリカにてWorld Matcha Inc.を創業。
抹茶の飲用機会を世界へ拡げるため、抹茶を粉で流通させる業界常識を覆し、オーガニック茶葉をひき、フレッシュ抹茶として楽しむ「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」を開発。2020年秋、アメリカでの発売直後「Time’s Best Inventions of 2020」に選ばれ、カリフォルニア州を中心に健康的なライフスタイルを求める人々の間で拡がっている。2021年7月、日本で発売予定。

星:仲間づくりの過程で、もともとのコンセプトが変わっていったり、さらに洗練されていくこともありますよね。

塚田:はい。スタートアップの場合、特にそうです。

たとえば、サントリーで新しいペットボトル飲料をつくるなら、最初から製造上の前提条件がある程度共有されているんですよ。ペットボトルの形はこう、殺菌方法はこう、ラベルの印刷できる面積はこれだけ……すべて決まっています。

それに対し、「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」のようなスタートアップの場合、ないものをゼロから試行錯誤しながらつくりあげていくので、難易度や複雑さが全く違いました。

星:具体的に、どのような試行錯誤がありましたか?

塚田:まず、「MATCHA SHOT(Cuzen Matchaがつくる濃い抹茶の液体のこと)」をつくる目的のマシンにするのか、それともボタン一つで「抹茶ラテ」までつくれるようにするのか。(注:抹茶ラテは、MATCHA SHOTにミルクを合わせてつくられる)

さらに、マシン内に水を入れるか、入れないか。

水を入れるとタンクやチューブが必要になって、殺菌の問題も出てくる……。

こうした試行錯誤の中で、エンジニアから「できますけど、こんなに大変ですよ」と現実を突きつけられたりして。

結局は、一口にラテといっても牛乳の好みは人それぞれですし、機械がやるのは「MATCHA SHOT」をつくるまでにしようというところに落ち着いたのですが。

極意2:デザインの力を信じよ。

星:コンセプトを形にしていく過程におけるデザインの力については、どのように考えていますか。

塚田:サントリーにいるときから優秀なデザイナーと仕事をしてきて、私自身、誰よりもデザインの力を信じています。

いいデザインというのは、こちらの狙いがちゃんと伝わるデザインです。

「Cuzen Matcha」の場合、日常生活の中に「禅」を感じる空間をつくりたいという私の思いがはじめにありました。

このマシンを部屋に置くだけで、家の中のある一角が禅を感じさせる空間になって、ほっとする。

実際に使って、抹茶のきれいな緑色や香りを五感で感じてピースフルな気持ちになる。

そんな未来をつくりたかったのです。

茶室の円窓をイメージさせるようなデザインは、その狙いを十二分に伝えてくれています。

空禅抹茶「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」

星:自分ではデザインできないから、仲間を見つけるということですが、「ここは自分でやろう」「ここは仲間にお願いしよう」という線引きは難しいですよね。そのあたりはどのように意識されていますか?

塚田:スタートアップなら全部自分でやるものだという考えもあるかもしれませんが、私の場合、完全に人に任せる部分と、自分がやらなきゃいけない部分を分けています。

たとえば、デザインについては、重要性をわかっているからこそ、その道のプロに任せたい。デザインに対するリスペクトがあるからです。

一方で、お金まわりや法律、総務、営業、販売、そのあたりは自分で勉強したり、人に聞いたりして、何がどうなっているのか把握するように努めています。

星:リスペクト」が線引きのキーワードというわけですね。

私も、どうしてスタンフォード大学・オンラインハイスクールの校長になったかというと、周りに優秀な教師がたくさんいて、素直に尊敬・感動してしまったので、教えることは彼らに任せようと思ったのです。それで、自分は違うポジションにまわろうと。