さらに、西洋料理にはワインを合わせたいと思うように、食事とお酒は味覚、習慣、文化さまざまな面から不可分一体であるし、飲食店のビジネスを考えると、酒類の提供を禁じられたら採算が取れない。

 先般、「酒類提供は19時まで、営業は20時まで」から「酒類の提供は禁止」とルールが変更されたときに、筆者の周囲では、すし、焼き鳥、和食などの多くの店が、緊急事態宣言期間中の全面休業を決めた。すっかりやる気を失ったのだろう。20時以前も含めて、飲食の選択肢は一気に狭まった。「外では、禁酒」という、いわば禁酒法は即刻やめる方がいい。

 短時間できれいに飲み食いして、飲食店を支援したいと思ってなるべく高いお酒を注文する――。そんな「良い客」の好意を封じることに積極的な意味があるとは思えない。

兵庫県の感染経路別患者数では
飲食店はわずか2.9%

 また、多くの飲食店の経営は、いわゆる常連客の存在に支えられている。閉店が長く続き、店と常連客との関係が切れ、常連客の側の生活習慣が変わることは飲食店の経営にとって大きなリスクだ。

 このままでは、今後宣言が解除されても、経営状態を元に戻すことができない飲食店が多数出るだろう。店と客の関係を切るような、乱暴な規制を行うべきではない。政治家には、後から食事クーポンを配ればいいだろう、というようながさつな考えで飲食ビジネスを見てほしくない。

 旭酒造の意見広告に、「例えば兵庫県の感染経路別患者数のパーセンテージを見ても、家庭52.1%、職場16.2%、福祉施設7.5%などに対して、飲食店は最下位のわずか2.9%です」とある(※データは兵庫県のホームページ)。飲食店経由の感染が少ないことには、これまでの対策の効果も反映されているのだろうが、これからさらに飲食店を対策の的とすることの効果の乏しさは明らかだろう。

 飲食の現場は感染がイメージしやすいし、業界としてまとまった政治力がないこともあって、政府や自治体が「やっているふり」をするに際して、格好のターゲットにされてしまっているのではないか。