先月行われた日米首脳会談を受けて「日本とシリコンバレーの関係を強化できないか」という相談が、在サンフランシスコ日本国総領事館の前田徹総領事からあった。
シリコンバレーを舞台に活発に行われる事業創造や事業イノベーションを、日本の産業界が効果的に取り込めていないという積年の課題があり、前田総領事の問題意識は的を射ている。
日米首脳会談の中で交わされた合意の一つに、日米競争力・強靭性(コア)パートナーシップがあった。日米の共同発表文書によれば、がん治療、バイオテクノロジー、ゲノム解析、人工知能(AI)、量子化学技術、民生宇宙、情報通信技術、サイバーセキュリティーなどの分野で、両国の技術協力を進めるという。ただ、これらは研究開発での交流や社会インフラの連携が主であり、シリコンバレー型のイノベーションには言及していない。
では、この合意をてこに、日本がシリコンバレーとの関係をより強化できるのだろうか。
私の答えはイエスだ。ただし、シリコンバレーの利用ではなく、逆に日本がシリコンバレーに対してどのような貢献ができるかという、意識の転換が鍵になる。
シリコンバレーの事業創造は、起業家コミュニティーの中に入ることができて初めて、そこからの価値を自分に取り込むことができるようになる。だが、コミュニティーに入るためには、まずそのコミュニティーの発展のために貢献しなければならない。日本企業はこの貢献が苦手だ。