思うようにいかないスズキは提携解消を申し入れたがVWは受け入れず、11年にスズキは国際仲裁裁判所への提訴に踏み切った。結果的にこの国際仲裁は15年8月に、裁判所がVWに対しスズキ出資株を売却するよう命じたことで、ようやく決着した。

 スズキとVWは資本提携を解消したが、それまで実に4年が経過していた。鈴木修会長にとって国際提携の難しさを知ったのがこのVWとの提携だったのだろう。

VW提携解消後に選んだのはトヨタ
自動車激変の時代に生き残りを懸ける

 しかし、鈴木修会長は、100年に一度の自動車大改革期を迎えていることを「自動車産業革命だ」と言い切り、提携による生き残りの道をあきらめなかった。自社単独で生き残ることの難しさを熟知していたからだ。

 16年10月、スズキはトヨタ自動車と業務提携に向けた検討を行うことを発表した。スズキが最終的な提携相手に選んだのは、トヨタだった。

 もちろん、トヨタは子会社にダイハツ工業という、スズキにとって軽自動車の競合となるメーカーを抱える。「スズキがトヨタグループ入りすると、ダイハツとの関係はどうなるのか」との懐疑的な見方もあった。

 だが、スズキとトヨタは旧知の仲だ。ともに、織機メーカーとして浜松で創業している共通点がある上、かつてスズキが米マスキー法の厳しい排ガス規制をクリアできなかった際に、トヨタを仲介にダイハツからエンジンの供給を受けた逸話もある。

 何を隠そう、当時、トヨタにダイハツエンジンの供給を頼み込んだ人物こそが、常務時代の鈴木修会長なのだ。

「東京駐在の常務として、ダイハツの4ストロークエンジンの供給を受けたいと、当時の豊田英二トヨタ社長に交渉して、了解してもらうことができた。だからトヨタさんには恩義がある」(鈴木修会長)

 豊田英二・豊田章一郎社長に続き、豊田章男現トヨタ社長と鈴木修会長との信頼関係は厚い。トヨタとの資本提携の裏側には、章一郎氏への相談を契機に章男社長との会談に結びついたという経緯もある。

 トヨタとの提携で、特に期待が大きいのが電動化戦略だ。