トーマス・クックの破産で迫られる「旅行業界のデジタル化」、新たな風を吹き込むのは?Photo:Photo:Clara Margais / Gettyimages

「世界初の旅行代理店」とも言われてきたトーマス・クックが2019年に破産申請をしたことは、旅行業界に大きな衝撃を与えました。業績悪化の大きな要因の一つが、デジタル化の遅れともいわれています。一方、後継者不在の旅館や古民家を改修して活用したりと、近年はその土地の持つ文化に「よそもの」が新しい価値観を持ち込み始めています。ここにワーケーション拡大や人の移動の増加が加われば、より強い観光資源となるはずです。(ONE・GLOCAL代表 鎌田由美子)

※本稿は書籍『「よそもの」が日本を変える』(日経BP)の内容を抜粋・一部再編集しています。

トーマス・クックの破産が象徴する
旅行業界のデジタル化

 コロナ禍直前まで、観光業界はインバウンド増加に伴い、業界全体が好景気に沸いていました。

 2012年の調査では全国の観光地における観光業従事者は約845万人、売上高は年間約90兆円という規模でしたが(「平成24年観光地域経済調査の概要」より)、2019年版観光白書では宿泊業の雇用、賃金が増加。宿泊業の従業者数は12年からの6年間で8万人、14.5%増加し(特に女性、高齢者の従業者数の伸びが大きくなっています)、宿泊業の平均賃金は6年間で11%上昇しています。さらに従業員1人当たりの売上高は4年間で13.8%増加と、生産性も向上していました。

 しかしこのように成長し続けていた観光業界もまた、新型コロナウイルス感染症の拡大で大きな打撃を受けているのはご存じの通りです。

 1851年のロンドン万博で団体旅行を企画・実施し、「世界初の旅行代理店」とも言われてきたトーマス・クックが2019年に破産申請をしたことは、旅行業界に大きな衝撃を与えました。業績悪化の大きな要因の一つが、デジタル化の遅れともいわれています。