かつて出世の王道とされた商社の「看板部門」が大苦戦している。その象徴が住友商事の金属事業部門と伊藤忠商事の繊維カンパニーだ。時代の変化に対応できず老朽化した看板は下ろさざるを得ない。特集『商社 非常事態宣言』(全15回)の#9は、名門復権に奔走する商社マンたちの姿を描く。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
歴代社長を輩出した住友商事の金属事業部門
かつての「栄光」も今は昔、2年連続赤字の理由
「なんでこんなに減損を出しているんだ」――。住友商事副社長の上野真吾は、決算書の数字を見てがく然とした。
資源・化学品事業部門長の上野に今年4月、新たに加わった肩書がある。金属事業部門長だ。金属事業部門は、上野が1982年の入社以来ほぼ一貫して歩み続けた「古巣」である。16年の常務昇格後、米州総支配人など金属以外のマネジメントに携わった上野にとっては、久々の古巣復帰だった。
住友商事の金属事業は、鉄鉱石や石炭などの資源を扱う他の総合商社とは違い、鋼管や鋼材の販売がメインだ。伊藤正、秋山富一、宮原賢次、岡素之、加藤進。1980年代から歴代社長を輩出し続け、長らく会社の収益を支えた金属事業部門は、社内外の誰もが認める住友商事の“看板部門”だった。
だが、近年の金属事業部門は、かつての栄光を知る上野からすれば、明らかに「苦戦」(上野)が続いている。
2020年3月期の部門純損益は504億円の赤字、21年3月期は同356億円の赤字と、住友商事の全6事業部門で唯一、2年連続の赤字に沈んだ。上野が感じたように、部門で相次ぐ巨額減損が経営の重荷となっている。
看板部門で一体何が起きているのか――。上野には思い当たる節があった。