純利益トップの座を三菱商事から奪い、“勝ち組”筆頭商社として勢いに乗る伊藤忠商事(2021年3月期純利益4014億円)は、業界初の純利益6000億円の大台を狙う。特集『商社 非常事態宣言』(全15回)の#11は、岡藤正広会長CEOが「商人」と認めた石井敬太新社長に首位固めの戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、田上貴大)
万年4位から首位「努力は報われる」
必死の営業で財閥系商社との差を挽回
――2021年3月期、伊藤忠商事が純利益と時価総額で三菱商事を抜いてトップに立ったことは、社長や社員にとって感慨深いものがあるのでしょうか。
それは感慨深いですね。ご存じのように伊藤忠は少し前まで万年4位だったし、2000年前後には、つぶれるかどうかの危機もあった。今の状況は(水泳五輪代表の)池江璃花子さんじゃないけれども「努力は必ず報われるんだ」という感じですよね。
僕が入社した当時、三菱商事さんを抜くなんて想像もしていなかった。新人時代は会社の順位をあまり考えることなく仕事に飛び回っていたが、三菱商事さんや三井物産さんと競合したときに資本力やパートナーの違いで仕事を取れないこともあった。
明らかに財閥系商社と差があって、それを挽回しようと思えば、必死に営業をするしかない。マスコミさんの「夜討ち朝駆け」じゃないですが、誰よりも早く情報を取り、誰よりも先にお客さんのところへ行く。そうやって「三菱にやる仕事を伊藤忠にやらせてみるか」と思わせるしかなかった。最近は化学業界でも伊藤忠の頑張りが話題になっていますよ。
――1位になったことでそのマインドがなくなり、「てんぐ」になっていませんか。