業界6位の双日(2021年3月期純利益270億円)は、副業解禁や起業支援、ジョブ型雇用の新会社設立など、異色の人事制度を矢継ぎ早に打ち出している。その狙いは何か。特集『商社 非常事態宣言』(全15回)の#8では、双日の藤本昌義社長が胸に秘める、ある長年の思いを聞いた。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、田上貴大)
「ビジネスチャンスが生まれている」
双日の社員よ、起業家精神を抱け
――双日は4月、35歳以上の社員が多様な働き方を実現するための新会社、双日プロフェッショナルシェアを立ち上げました。この狙いを教えてください。
歴史をひもとくと、うちの源流は鈴木商店であり、岩井商店であり、ニチメンという商社だった。いろいろな企業を立ち上げてきたし、鈴木商店でいうと、現代のプラスチックの代わりだったセルロイドに目を付けて(原料となる)樟脳の事業をやってきた。
日本はそれなりに社会の仕組みやインフラが整っているが、これから少子化に向かう中で、環境の変化に合わせて何かに取り組まないといけない。その変化の一つとして、巨大企業の市場独占が難しくなり、そこに小さな隙間ができて新しいビジネスチャンスが生まれている。
その変化の中で当然、「起業したい」と考える人も出てくる。「起業家精神を持ってどんどんやってくれ」と社内で言えば、本当に起業しちゃう人もいる。
かつて、僕と本当に仲が良くて、同じ東京大学法学部から入社した同期がいた。彼と僕は同じ自動車部に所属していて、「ライバル」といわれていた。
だが彼は、1990年代後半のアジア通貨危機の前後辺りで会社を辞めてしまったんだ。