インフレはすでに到来しており、長期的な物価上昇圧力も大きい。だが、現在からそこに至るまでには、投資家と経済にとって大きな疑問がある。足元の物価上昇は一過性のもので、来年までには後退するとの米連邦準備制度理事会(FRB)の想定は正しいのか。FRB内ではすでに漠然とした疑念も生まれている。インフレ率はそのうち自然に元の水準に回帰する可能性が高いとの見方を引き続き唱えながらも、金融緩和の一部解除に向けた議論の時期を探る動きが出てきた。インフレは一時的とする主張の根拠はシンプルだ。消費者需要は景気刺激策に加え、経済再開に伴うペントアップ(累積)需要が実体化することで大きな追い風を受けている。一方で、供給は需要に追いついていない。ロックダウン(都市封鎖)中の需要崩壊を受けた在庫の取り崩しや生産能力の縮小、労働者による職場復帰の敬遠、新型コロナウイルス絡みの制限措置による生産への余波などが要因だ。その結果、中古車など一部の項目で価格が突出して跳ね上がり、総合消費者物価指数(CPI)が押し上げられている。こうした物価上昇は、余剰資金による消費が一巡し、企業の業務が正常化すれば、後退するだろう。