ナトカリマップナトカリマップ(画像は権利者の承諾を得て使用しています)

 実際、登米市の健診担当者のメモには、健診を終えた市民が会場内に置いた塩分や野菜摂取に関するリーフレット(COI東北拠点で作成したナトカリマップ(R))や、野菜350g(1日5皿)のフードモデルなどを見ながら「うちは農家だから、野菜はたくさんとれているね」「うちの妻(夫)は塩辛いのが好きだから、やっぱりナトカリ値も高い」などの会話で盛り上がっていた様子が生き生きと書き記されていたという。

 努力の見える化に加え、解決策も具体的かつ分かりやすく見える化したこと、さらに1年限りではなく3年間継続した、という3点の相乗効果も大きいのではないだろうか。

 成果が公表された後、登米市には市民から「継続してほしい」との要望が寄せられ、ナトカリ計による取り組みは当初3年間の予定だったところ、さらに2年間の継続が決まった。

「今回、ナトカリ比を測ることが集団全体の血圧管理に好影響を与える可能性が示されました。この事業は、広く普及することで日本人の血圧を大きく下げ得る試みだと思っています。とはいえ普及には、測定の効率化(費用的・人材的・体制的)が必要で、全国展開に向けたハードルの確認とその除去を目指す必要があると思います。登米市の成果が広く発信されることで、そういった動きが加速することを期待しています」(寳澤教授)

 高血圧にはナトカリ比の見える化が良さそうだが、糖尿病の場合、血糖値は前々から見える化できており保健指導も散々工夫されているが、前述の通り、なかなか効果は見えない。他の生活習慣病についてはどんな情報を見える化したらいいのか。医療者の模索はつづく。

監修/国際医療福祉大学医学部教授 坂本昌也、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、予防医学・疫学部門個別化予防・疫学分野教授 寳澤篤ほか