19年に発覚した問題は、秘書らが17~19年、選挙区内の有権者9人に香典計12万5000円、同18人に故人の枕元に飾る枕花(計約17万5000円相当)を提供したとされた。

 こちらについては特捜部が事実認定する一方、(1)他の大部分の葬儀などでは自分で持参していたが、代理は公務などがありやむを得なかった、(2)違法性の認識を認めて反省し経産相を辞任した、(3)違法行為に該当する金額が少ない――などから、悪質性は低いとみて不起訴(起訴猶予)としていた。

(1)については補足が必要だが、公選法は政治家が選挙区内の有権者に金銭や有価物の提供を禁止しているが、本人が出席した通夜や葬儀・告別式で香典を渡すことまでは禁じていない(結婚式の御祝儀も同様)。しかし「公務のため」とはいえ、秘書や家族が政治家名義で「代理」として渡したのがNGだったわけだ。

 特捜部は(1)(2)(3)を総合的に判断し「法を軽視する姿勢が顕著とまではいえない」を理由に不起訴としたわけだが、東京第4検察審査会が「待った」をかけた。

誰もが疑わなかった
「不起訴処分」

「国会議員はクリーンであってほしいという国民の願いに配慮すべきだ」「(現金の提供は)将来の選挙も念頭にあったと考えるのが自然だ」などとして起訴相当と議決し、刑事処分を問うべきだと指摘したのだ。

 そして、特捜部が議決を受けて再捜査していたさなかに、新たな疑惑が浮上したというのが経緯だ。その結果、不起訴とした香典などで公訴時効を迎えていない部分と抱き合わせ、略式起訴するとみられる。

 これを受けて東京簡裁が略式命令を出し、菅原氏が罰金を納付すれば公判は開かれないまま罰金刑が確定し、公選法の規定で菅原氏は公民権が停止されることになる。

 ここ最近「政治とカネ」を巡る事件が相次いで立件されたが、IR汚職事件に問われた秋元司衆院議員のように徹底的に争うケース、選挙違反事件の河井克行元法相(衆院議員を辞職)や妻の案里氏(参院議員を失職)のように途中で身を引くケース、鶏卵生産者業界による贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農相のように疑惑浮上で衆院議員辞職――など、対応が分かれている。

 では、なぜ菅原氏は刑事処分が問われる前の「議員辞職」を選択したのか。前述の社会部デスクとの情報交換した内容で考察してみたい。