「5年後」を見据えた
辞任のタイミング

 検審は司法の専門家ではなく、無作為に選出された日本国民(公選法が定める有権者)で構成される機関だ。検察官が独占する公訴権の行使に民意を反映させ、不当な不起訴処分を抑制するために地裁やその支部の所在地に設置されている。

 今回の問題は最近の「政治とカネ」を巡る問題に歯止めがかからないため、検審が「民意を反映」させて厳しく対処し、その結果として存在意義を発揮したとの見方もできる。

 現在、菅政権は新型コロナウイルスへの対応が不手際と指摘され、支持率が急落。さらに衆院選に向け、支持率浮揚のきっかけにしたい思惑が見え隠れする五輪・パラリンピック強行策も、国民の反対論が根強い。

 この状態で自身が刑事責任を問われる事態になれば、大臣の椅子に座らせてくれた恩人に泥を浴びせることになる――。国会の会期末は16日。当然、最高検、法務省、首相官邸のラインで「略式起訴のXデー」は伝わっているはずで、その前に自ら決断したとみるのが自然だろう。

 罰金刑であれば5年間の公民権停止となる可能性が高い。一方で、菅原氏は自民党幹部に秘書を通じ「捲土(けんど)重来を期したい」と訴えたとされる。

 公民権停止の期間中、選挙運動は禁止されているが、政治活動までは禁止されていない。 潔く身を引くことで菅政権への打撃を最小限に食い止めることで義理を果たし、その後を見据えての判断であれば、納得できるタイミングではある。