全固体電池の開発が激しさを増しているのは、全固体電池がEV市場のゲームチェンジャーとなる可能性があるからだ。EVの普及を妨げてきた航続距離の短さなどの欠点を解決し、本格的な普及の足掛かりになる、と期待が集まっている。

 2020年代半ばから30年代以降になれば全固体電池などのイノベーションが生まれ、商品性の高いEVが増え、市場が本格的に拡大する可能性がある。この分野は化学メーカーなどの素材産業の貢献が必要で、日本勢は優位な分野でもある。現状ではEV市場で劣勢の日本メーカーではあるが、電池革命が起きて、ゲームチェンジしたときには、最先端を走ることも可能だろう。

 課題としては電池が量産段階に入ったときに日本の競争力を維持できるかだ。リチウムイオン電池の研究では、吉野彰博士(旭化成名誉フェロー)が欧米の化学者らと2019年にノーベル賞を取った。リチウムイオン電池を初めて実用化したのはソニーで、ソニーと自動車向け電池を世界で初めて共同開発したのは日産だった。

 しかしリチウムイオン電池の普及が様々な分野で広がり、量産化が進み始めると、サムスンやLGなど韓国メーカーに追い抜かれてしまった。

 全固体電池など次世代電池が登場し、ゲームチェンジが起きたとき、開発の先駆者として日本はリードし続けなければならない。量産段階でリチウムイオン電池のような失敗を繰り返しては、せっかくのゲームチェンジャーとしての果実は得られないだろう。