共通点に着目し、
「SoWhat?」を問う
モデル化にあたっては、単に皆が思いつくことや表層にとどまらず、一歩深い洞察をし、言語化できれば価値が増します。たとえば、「組織文化とは〇〇のための装置である。〇〇を埋めよ」と問われたときに、皆さんは何と答えられるでしょうか。「組織の意思決定のスピードを上げるための装置」や「組織の一体感を高めるための装置」「新人を会社に染める装置」といった表現ができそうです。これはこれで間違いではありませんし、組織文化の効用としてよく指摘される点です。
ただ、ここでもう一ひねりしてみましょう。例として組織文化に合わない人材に着目します。彼/彼女はどういう行動をとるでしょうか? 企業規模や業界の人材の流動性などによっても変わってきますが、組織文化に合わない人は、非常に居心地悪く感じて辞めてしまうことも多いでしょう。この部分に着目すると、「組織文化とは排除のための装置」あるいは「組織文化は人材の選別装置」といった、やや突っ込んだモデル化もできるわけです。このモデルの定義を思いつけば、個性的な組織文化は、自社に合う人材の比率を上げることにつながるシステムとして機能させられることが分かるのです。
図示化するには
有名なフレームワークを参考に
言語でのモデル化に慣れたら図示化にも挑戦してみましょう。最初は単純な箱を2つつなげるようなものでも構いません。たとえば、「顧客満足度」と「従業員満足度」を2つの箱として書き、その間に好循環構造が回っている図を描けば、これは立派なモデル化です(この効果は実際に「サティスファクション・ミラー(鏡面効果)」と呼ばれています)。
このようにモデルで考えることは互いの関係性や因果関係を明らかにすることにもつながり、他の思考法と併用することでさらにパワーを発揮します。もう少し複雑なものを検討しようとするのであれば、有名なビジネスフレームワークに触れて、その工夫を感じ取っておくといいでしょう。これらは、図示の仕方という意味でも優れたものを持っていることが多いからです。
マイケル・ポーターの「5つの力分析」(業界の儲けやすさを知るための分析)は、知らない人が見たら単に箱を5つ並べたようにしか見えません。しかし、実際には横にはバリューチェーンの箱を、縦には競争相手の箱を並べるというロジカルな作りになっており、覚えるうえでも非常によくできているのです。
オットー・シャーマーが提唱した「U理論」(リーダーシップ開発や、イノベーションのための思考プロセスに関する理論)も、奥が深い理論ですが、「U」という文字でそのプロセスを示すことで、1つのモデル図に多彩な意味づけをしています。ビジネスフレームワークは単に実務で使えるだけではなく、モデルで考えるといったことにも役に立つ人類の知恵の宝庫なのです。
事象や法則のエッセンスを表出させる
①言語でモデルを作る
②共通点に着目し、意味合いを考える
③有名なフレームワークを範とする
(本記事は『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』〔グロービス著、嶋田毅 執筆〕の抜粋です)