効率よく仕事を進めたい、アイデアがパッとひらめくようになりたい、うまい受け答えができるようになりたい…。身近にある「こうなりたい」の近道は、「考え方のコツ」を手に入れることだ。
『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』では、MBAのクラス、学者、コンサルタントなど、「考えることにこだわっている」人たちが日常で使っている、確実に生産性が上がる考え方のコツだけを紹介している。ぜひ、あなたも“本当に役に立つ”考える力を身につけてほしい。(イラスト:fancomi)
「べき論」で考える
「べき論」というのは、「こういう場合にはこうあるべきだ」あるいは「そもそもこうなっているのが普通なのに、そうでないのはおかしいと」いう考え方です。例としては、「管理職以上も男女が半々、あるいはそれに近くあるべきだ」「仕事の評価は達成した業績のみでなされるべきだ」「ビジネスパーソンの潜在力に年齢は関係ないはずだ」といったものです。
この考え方は、特に外部者(社外取締役やコンサルタントなど)が用いると効果を発揮する思考法でもあります。ある組織における「当たり前」が実は当たり前ではなく、むしろ非効率を生んでいることを抉り出すことが多いからです。
ボトルネックを「質問攻め」で探る
これは実際に筆者が遭遇した例です。業績不振が続くその企業では、企業にとって当たり前のPDCA(Plan-Do-Check-Action)ができていませんでした。簡単なPlan(計画)らしきものはあるのですが、特にCheckとActionが弱く、やったらやりっぱなしという状況でした。それどころか、1年前の実績すら引っ張り出してこないと分からないという状況です(当時はまだパソコンによる数値管理が普及しておらず、紙による管理が一般的でした)。
企業においてPDCAというものは、程度や徹底度合いの差こそあれ、当然回すべきものです。それを行うことによって問題解決が早くできたり、目標に対する実績の達成度合いが安定したりするからです。
筆者はそこで聞いてみました。「この会社ではなぜPDCAを行わないのですか?」(実際にはもう少し遠回しに別の言葉で聞きましたが、エッセンスは同じです)返ってきた答えは、「別に求められていないから」というものでした。
「求められていないというのは、経営者が求めていないということですか?」「そうです」
そこで次に経営者に話を伺うことにしました。
「なぜPDCAを回さないのですか?」「だって現場にも負荷がかかるし面倒じゃないですか」
「しかし、それをしないで経営をする方が後手に回ってかえって大変ではないですか?」「まあ、そうともいえますが、その辺の勘所はわかっていますから。なるようになるものです」
「……目標達成に向けての意志などは弱くなりませんか?」「さあ、どうですかね。まあ、上(親会社)から降りてきた数字が多少達成できなくても、大赤字でなければ別に問題はないですから」
その後もいくつか質問をした結果、分かったのは以下のようなことです。
●この経営者はPDCAの効果を理解していない
●ビジネスの規模化への意識が弱く、いつまでも属人的センスで回すつもりでいる
●親会社からのプレッシャーが非常に弱い
これでは不振が続くのも当然です。ただ、原因が明らかになればそれなりに打つ手は見えてくるものです。その後、この企業にも当たり前のPDCAの仕組み(例:KPIによる業績把握、週1度の進捗管理ミーティングなど)が導入されることで、みるみる業績は向上していったのです。
非合理的なことに着眼する
もう一つ別の例です。脚色していますが、これも筆者が直面したケースです。その企業では、それまでの事業の発展形ともいえる新規事業を始めていました。そこそこのパフォーマンスは残しているように見えていたのですが、会社全体としては利益が停滞している状況でした。
ここで出た質問が、「なぜ、これだけの重要事業なのに、専任が2人しかいないのか?」です。その事業はプロジェクト的に運営されていたのですが、四六時中その事業のことを考えている人間はたったの2人、しかも比較的若手だったのです。「新規事業にはエースを充てるべき」というべき論からすれば、やはり好ましくはありません。
これも原因を追究していったところ、他部署の優秀な人間をその上司が過度に手離したがらないことが分かりました。そこでトップダウンで組織の改編を行い、しかるべき人間が専任のリーダーとなり、「普通の組織」になったのです。