効率よく仕事を進めたい、アイデアがパッとひらめくようになりたい、うまい受け答えができるようになりたい…。身近にある「こうなりたい」の近道は、ずばり「考え方のコツ」を手に入れることだ。
『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』では、MBAのクラス、学者、コンサルタントなど、「考えることにこだわっている」人たちが日常で使っている、確実に生産性が上がる考え方のコツだけを紹介している。ぜひ、あなたも“本当に役に立つ”考える力を身につけてほしい。(イラスト:fancomi)
本質をつかむには「モデル」で考える
モデルとは、ある事象や法則のエッセンスを模式化、図示化したものです。もともと自然科学などで多用されていましたが、ビジネスをはじめとする社会科学にも応用されています。
たとえば、中学校の教科書に出てくるラザフォードの「陽子の周りを電子が回っている」という原子のモデルは、その後の物理化学の発展に大いに役に立ちました(実際の原子の姿は量子力学的にはもっと複雑なのですが、エッセンスは入っているのです)。自然科学ではあるモデルを仮説的に想定し、実験でそれを検証していきます。どれだけ的を射たモデルを最初に構想するかが、科学者の腕の見せどころとなるわけです。
以下の図に示したのは、クレイトン・クリステンセンが提唱した「破壊的イノベーション」「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる事象のモデルです。
このモデルのエッセンスは、最初は陳腐に見られていた技術(破壊的イノベーション)が、いつの間にか性能を上げ、気がついたら市場のメインストリームに躍り出ているというものです。一方で、当初市場を制圧していた企業は、ハイエンドの顧客の声を聞きすぎ、また新技術を模倣する動機を持ちにくいため、いつの間にかオーバースペックとなり、競争力を失っていきます。事実、この事象はあちこちで観察されており、破壊的イノベーションに備えるうえで(あるいはそれを起こすうえで)重要な示唆を提供するのです。そうした役に立つ示唆を得られる点がモデルの良いところです。
まずは言葉でモデル化を
このような事例を見ると、「自分は学者ではないし、そんなモデル化なんて簡単にできないよ」と思われる方も多いかもしれません。実際、このレベルのモデル化をできる人間は多くありません。しかし、モデルは先の図のようなものでなく、文章のみでも構わないのです。
「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」「官僚機構は自己肥大化する」「事件は構造をあぶりだす」といったよく知られた言葉も、実はモデル化の一種です。あるいは「情けは人のためならず」に代表される有名な諺も、ある意味でモデルといえます。要は、多くの事象に共通するエッセンスを、図示化できないまでも言語化できればいいのです。
そこで必要になるのが、事象の共通点に着目することです。まずは、「〇〇は△△である」あるいは「◇◇は☆☆する」といえないか考えてみるといいでしょう。たとえば、「規制はビジネスチャンスを生み出す」などです。すべての事象に当てはまる必要はありません。まずはN=3(本書の62ページ参照)で構わないので、文章として普遍性がありそうなことをいえないか考えてみましょう。