スカイツリーのブランド戦略は失敗か

 話を冒頭のくまモンに戻そう。

 昨年3月7日、熊本県はようやく6年間こだわっていた「酷MA萌」ネーミングをあっさりと捨てて、すでに中国のファンの間ですっかり定着した「熊本熊」を追認した。

 県側は「熊本をより容易に連想できる名前に変えることで、認知度を高めたい」と追認の理由を明らかにしている。その「豹変」ぶりに拍手を送りたい。県側の決断力と市場に対する真摯な態度が確認できたからだ。

 原稿作成の途中、疲れた頭をすこし休ませようとして、しばらくコーヒーを飲んだ。マンションの北側の窓の外には、スカイツリーがそびえ立っている。雨が降りそうなので、スカイツリーの上半分は雨雲に隠れている。

 スカイツリーの中国語ネーミングの悪戦苦闘ぶりを思い出した。当時、登録作業が遅れに遅れたため、一番ピッタリくる「天空樹」がすでに誰かに先に登録されてしまっていた。結局、苦し紛れに登録できたのは「晴空塔」だ。

 雨雲に隠れたスカイツリーを目にする度に、そのネーミングのおかしさに苦笑し、スカイツリー運営会社のそのブランディングの失敗を改めて嘆いた。グローバル経済になったいま、日本企業のブランド戦略も国境を超えた意識を持たないと、たいへん大きなリスクを冒す恐れがある。再度、警鐘を大きく鳴らしたい。