3度目の大規模なシステム障害を起こしたみずほ銀行とみずほフィナンシャルグループに対して、第三者委員会がまとめた調査報告書が、6月15日に公表された。報告書では、頭取が自行のATM障害をインターネットニュース経由で知るなど、衝撃の事実がつまびらかにされた。最たる「汚点」は、企業風土に問題があると“再び”指摘されたことだ。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
みずほ第三者委がシステム障害の報告書を公表
愕然とする二つの新事実が明らかに
「驚きのあまり言葉が出なかった」――。新たな事実を知らされて、みずほのグループ内部の人間ですら、愕然とした。
3度目の大規模なシステム障害を起こしたみずほ銀行と親会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に対して、原因究明のために立ち上がった第三者委員会が調査報告書をまとめた。
報告書には、みずほが抱える“病巣”と共に、目を覆いたくなるような二つの新事実が書き込まれている。
一つ目が、18年6月に、今年2月末からの大規模障害に通じるATMトラブルが発生していたというものだ。
今回の大規模障害では、ATMに通帳やカードが取り込まれたままの顧客を長時間待たせてしまうという顧客対応のずさんさが指摘された。実は18年にも、取引エラーに陥ったATMが、顧客の通帳やカードを合計1821件取り込むという広範囲な被害が発生していた。
だが、「改善策が必要な恒常的な問題とは認識しなかった」(報告書)みずほは、一連のトラブルを監督官庁である金融庁に報告することも、顧客に公表することも、事後対応もしなかった。
みずほFGの坂井辰史社長は、18年のトラブル発生後に報告を受けていた。ただ、当時の報告にはATM障害が「(通帳やカードの)取り込みにつながったという観点がなく、見逃してしまった」(坂井氏)と、重大な因果関係に気付くことができなかった。
確かに、緊急時のために通帳やカードを取り込む仕様のATMは他行にもある。それでも結果的に、ATMの仕様が今回の大規模障害では多くの顧客に不利益をもたらした。すでに2度のシステム障害を起こしていたみずほは、万全を期すためにささいな顧客トラブルも見落とすべきではなかったはずだ。
18年のトラブルで、通帳やカードの取り込みで多くの顧客が困っている事実が表面化したとき、経営陣を筆頭に事実を認識した誰かが「『これで大丈夫なのか』となぜ疑わなかったのか」(みずほ関係者)。グループ内から、怨嗟(えんさ)の声が漏れ聞こえてくる。
二つ目の新事実が、今年2月末に発生したATM障害において、グループトップである坂井氏と銀行トップである藤原弘治頭取の認知のタイミングの遅さだ。
当日の午前中には、担当部署はシステム障害を把握していた。だが、首脳陣への報告は遅れ、藤原氏は午後1時過ぎにインターネットニュース経由でATM障害を知ることになる。坂井氏に至っては、午後2時ごろに来た報告メールを見落とし、午後4時ごろに障害を把握するというお粗末ぶりが露呈した。結果、非常対策チームの会議が立ち上がったのは午後5時となった。
確かに個人的な事情で「メールを見られる状態ではなかった」(坂井氏)という面は仕方ないかもしれないが、障害が発生した週末に、その元凶となった大型のデータ移行作業があることを坂井氏も把握していたはずだ。
2時間にわたり報告メールを放置した事実は、「何かトラブルが起これば即座に連絡が入る」という認識が欠如していた裏返しであり、危機意識が足りなかったと言わざるを得ない。
もっとも、報告書によって突き付けられた最大の「汚点」は、この二つの新事実ではないだろう。みずほという大企業が「企業風土」そのものに“まだ”問題があると指摘された点だ。