彼女は、どちらかと言えば、僕とは真逆で自ら前に出ていくタイプではなく、ことさらにはしゃぐようなところもありませんが、いつもニコニコしています。彼女の、その穏やかな表情にいつも助けられていますし、なぜ、あんなに自然に微笑むことができるんだろうと、学ばせてもらってもいるのです。

 そして、いつも感心させられるのは、彼女の物事の捉え方です。

 例えば、こんな話があります。

 ある夏のこと、僕抜きで、妻と子どもたちが、妻の両親たちのいる避暑地に旅行に行ったときの話です。

 東京に帰るときに、おみやげを買い込むのに時間がかかって、新幹線に乗り遅れそうになったのだそうです。それで、大きな荷物を抱えて、あたふたとしながら新幹線に乗り込んだのですが、ピシッと閉まったドアを振り返ると、ホームに荷物を置き去りにしていたのが見えたのだと言います。

 妻ももちろん最初は、「あちゃー」と顔をしかめたそうです。

 その妻の様子に気づいて、小さい子どもたちも不安そうな表情に変わります。

 僕がそこにいたら、「誰や、忘れたんは?」「何やっとんねん」とでも言っていたかもしれません。

 ところが、ここで妻は、にっこりと笑って「荷物でよかったね。みんなを置き去りにしてたら、大変だったよ」と言いました。それで、みんな「ほんとだね。よかった、よかった」と大笑い。このエピソードは、もはや我が家のネタになっています。

長期間にわたって好成績を収める
営業マンに共通していること

 あるいは、こんなこともありました。

 ある朝、妻から「今日は用事があるから、私に車を使わせてもらってもいいかな?」と声をかけられました。僕は、関西弁で「ええで」と返事をしたのですが、出掛ける準備でバタバタしているうちにすっかり忘れてしまって、いつもの習慣で車に乗って出掛けてしまったのです。

 もちろん、しばらくしたら妻から「お怒り」のLINEが届きました。100%僕が悪いので、あわてて妻に電話をして平謝りしました。すると、妻はケロッとしていて、「もういいよ」と言います。「なんでや? 困るやろ? すぐにレンタカーを手配するから待っててくれへんか?」と言うと、妻はこう応えたのです。

「ううん、もういいの。今日は、私、車で出掛けないほうがよかったんだよ。きっと、車で出掛けてたら、事故とかしてたんじゃないかな。でも、これからは気をつけてね」

 帰宅してから、もう一回「今日はごめんな」と謝りましたが、妻はいつもと変わらない笑顔で「もういいって言ったでしょ」と応えるだけ。そんな様子に僕もホッとして、ふたりで笑い合って一件落着となりました。

 これが、僕の妻の「思考法」です。

 まったく頭が下がります。何があっても、妻が感情的になっている姿を見たことがありません。誰かを責めたりすることもなく、いつも、置かれた状況のなかで「いいこと」を見つけて、プラス方向にモノを考える。そして、みんながハッピーになるようなことを考えて、相手を笑顔にさせることに喜びを感じる。そういう「思考法」が一貫しているのです。

 僕は、これが大切だと思います。

 こういう「物事の捉え方」「思考法」ができれば、自然と周囲の人々が笑顔になり、本人も笑顔に囲まれることでハッピーになれる。そこに、「愛嬌」が生まれるんじゃないかと思うのです。

 実際、一時的に好成績を収めるだけではなく、長年にわたって好成績を上げ続けている営業マンは、みんな自然な笑顔をもっています。そして、同僚からも、お客様からも愛されている。

 それは、いつも「みんながハッピーになれる」ためにはどうすればいいかを考えているからではないでしょうか? だからこそ、図々しいことをお願いしても、それを受け入れて「力を貸そう」という人が現れるのだと思うのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。