トランスミッションは9速AT。100km/h走行時のエンジン回転数は1300rpmほど。これは8速ギアでのデータ。この速度では9速には入らない。120km/h時にどうなるかは未確認だが、せっかくの9速ATも、日本では“宝の持ち腐れ”感が漂う。

 試乗車はAMGライン装着車。標準比で2インチ増しとなる20インチタイヤを組み合わせていた。その影響か、高速道路上のパッチ補修跡などでは、極めて上質な乗り味の中にも、ややばね下の重さを意識させられるシーンがあった。

 一方、大柄な重量級モデルでありながら、ワインディングロードでは“ドライバーズカー”としての身軽さを実感した。このフットワークには、60km/h以下の領域では逆位相制御を行うリアアクスルステアリングの貢献もあったはず。パーキングスピードではその威力はさらに明確で、最小回転半径は何と5.4mをマークする。

 ADASやコネクティビティ機能は最先端。ともに高い完成度を誇り、クルマとしての魅力を高める要素になっていた。

 新型Sクラスは、走り、快適性、先進性など、すべての面でフラッグシップサルーンの新基準といえる。世界のライバルを突き放しにかかるモデルだ。

(CAR and DRIVER編集部 報告/河村康彦 写真/小久保昭彦)

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