前年まで2年連続で1位だった宮崎県は73.0点で2位となった。1位の座は譲ってしまったが、幸福度の高い県であることに変わりはない。3位には熊本県が72.4点で、前年の9位から大きく順位を上げた。4位の山梨県(72.1点)、5位の愛媛県(71.8点)ともに大きくランクアップしている。

 田中章雄・ブランド総合研究所社長は、「『幸福度』は地域というよりも個人の要素が強いといえる。特に収入面や健康面での家庭の悩みが『幸福度』につながりやすく、気持ちの余裕を持つことができる人が幸福を感じやすいといえる」と推測する。

 今回のランキングで注目すべき点は、昨年の順位から大きく上昇した都道府県が目立っていることだ。昨年の12位から4位へと順位を上げた山梨県は、独自の感染防止策「山梨モデル」がテレビや新聞等のメディアなどで大きく取り上げられ話題となった。

 これまで山梨県民は、さほど自分たちの「幸福度」を他県と比較することはなかったが、山梨モデルという取り組みを通して、「他県よりも幸せだ」という県民の意識が高まったと考えることができる。

 田中社長は、「前年から大きく順位を上げている都道府県の特徴は、緑と食が豊かなところが多い。特に食に関しては、危機的状況のときにはとても重要だ」と話す。

 また、同調査では、地域の持続性を構成する指標として「幸福度」以外に「生活満足度」など3つの指標も算出しているが、前年に対し「幸福度」の順位を伸ばしたのは沖縄、岡山、佐賀、三重、北海道、長崎、愛媛の7道県、一方「生活満足度」で順位を上げたのは愛媛、長崎、新潟、長野、宮城、広島、岡山の7県だった。

 両者には相関はあるが、強いとまではいえない。すなわち「生活満足度が高い(生活が豊かな人が多い)からといって、必ずしも幸福度が高い(幸せを感じる人が多い)とはいえないことがわかるだろう。

 この結果に関しては、「過ごしやすく、暖かい気候や風土、人間関係が大きなポイントではないか」と田中社長は分析する。

「たとえば、沖縄県民は一旦他県へ移住しても多くの人たちが沖縄に戻っている。経済格差や基地問題など県として課題はあったとしても、個人個人はその地で暮らすことを幸せと感じることで、地域の持続性につながっているだろう。その点では山梨県と宮崎県も、県民の特性として似ているところがある」

北陸の「幸福度」下降は
コロナ禍の特殊事情?

 一方、今回の調査では、北陸地方の「幸福度」が下がっている。ただし、点数でみると、昨年比較で大きな変化はない。つまり、他の都道府県のポイントが上がったという捉え方が妥当である。北陸地方の人たちが「幸福度」を感じることができなくなったわけではなく、よその地域の「幸福度」が上がったことで相対的に順位を落としたと考えられる。

 この現象を読み解くヒントは、コロナ禍で定着した「ステイホーム」というライフスタイルにあるかもしれない。

 というのも、外に出て楽しむことができない条件は全国共通だ。それぞれの地域に外での楽しみがどれだけあるかが、従来の「幸福度」を感じる条件のひとつだったとしたら、ステイホーム生活によって“隣の芝生”が青く見える心理が薄れたと考えられる。実際、1位の沖縄県の78.1点は別格としても、2位宮崎県の73.0点から最下位の山口県が64.6点まで、全体の点差は例年より小さく、全国的に平準化された。全体的にはむしろ、全国的に「幸福度」が底上げされていることが明白となった。北陸各県が順位を落としたのは、その結果といえるだろう。

 ただし、田中社長は経済面の影響について、「北陸地方は2015年の北陸新幹線の開通以来、交通の便の向上を謳歌してきた。だとすると、コロナ禍で人の移動が減ったことも影響しているかもしれない。観光面や地方経済面で悲観的に感じている人も少なくないだろう」とも語る。それもまた、コロナ禍ゆえの特殊事情といえる。

(ライター 西嶋治美)