でも、それは医者の側の都合ですよね。患者さんもご家族も「どうしたらいいですか」「なんとかなりませんか」と僕を頼ってこられる。でも、僕はすぐに答えが出せない……。悩み、疲れ果て、僕は患者さんと向き合うことが怖くなってしまいました。

 そんなとき、指導医の先生が言ってくれたんです。「みんな、わからないさ」「とりあえず、悩むのはやめて、いったん保留!」……僕より経験豊富な先生でも、「わからない」ことがあるのか。それまで僕には、イエスかノーかしか、選択肢がなかった。イエスかノーかわからないことがあると、つまずいていたのはそのせいです。でも、イエスでもノーでもない第3の選択肢として「いったん保留!」があったのです。

 そう知ってから、だいぶ気持ちが楽になりました。等身大の自分で、患者さんと向き合うことができるようになった気がします。虚勢を張る必要もなく、自然体でいられる。疲れも軽減したように思います。

「いったん保留」は逃げじゃない!

 日常生活でもそうですよね。

「子供はどう育てたらいいんだろう」「将来、僕の会社はどうなるんだろう」……そんな悩みも「う~ん、よくわからない!いったん保留!」。そして「今、自分にできることをやって、それで様子を見ていくしかないよな」「まずは最善を尽くそう!」と、気持ちを切り替えます。

 だから、「わからない」という選択肢を選んで、悪い結果になることは、まずありません。だって「わからない」は逃げじゃない。逃げどころか、「今できることに最善を尽くす!」という、覚悟の言葉でもあるんですから。

 不安を断ち切り、「今、ここ」に集中するために、「いったん保留!」は魔法の選択肢です。

簡単に「変われる」なんて言われたくない

「そんなの、言われなくてもわかってる!」「でも、できないものはできないんだ!」そう思うこと、僕にもたくさんあります。

 たとえば、心配性な性格を人にイジられるのも、その1つです。僕はどこにでも日記帳を持ち歩いて、上司に怒られるとすぐ「ちくしょー」と書いたりするんですが、そういうところですね。