本にはよく書いてあるんです。「変えられないことを嘆くより、自分の力で変えられるものを、まずは変えましょう」って。そんなこと、人に言われなくてもわかってる。わかってるけど、何をどうしたらいいのかわからない。だからつらいんです。

 新聞配達の仕事をコツコツ続けてきた男性の話です。コロナ禍で会社の業績が悪化したため、退職して役所に相談に行ったところ、こう言われたそうです。

「これまで、ほかにどんな努力をされてきましたか?」
「ほかの仕事は何もされてこなかったのですか?」
「同じような仕事を紹介するというのも、むずかしいと思いますので、何か資格でも取って、生活されてはいかがですか?」

 すごく悔しかった。自分が情なかった。言われて簡単にできるぐらいなら、そもそも相談になんて行かないのに。そうおっしゃっていました。

 人はいつでも変われる。それはその通りかもしれません。でも、資格を取るにも時間がかかりますし、学校に通うとなると、さらにお金もかかります。簡単に「変われる」なんて、言ってほしくない。そう思いませんか?

 がんばって、がんばって、がんばり抜いて、今をかろうじて生き抜いている。そういう人に「自分を変えろ」というアドバイスは、現実離れしていると思います。変えられない自分を再確認して、自分を責めるだけです。

「5分ルール」で、できることから始める

 時代がちがえば、育った環境も、考え方もちがう。世の中の常識も全くちがいます。もっと言えば僕たちは、生まれる時代も、生まれる国も、生まれる地域も、生まれる家族も、生まれる前のことは何一つ自分で選べません。

 僕たちにできることは、自分の今いる環境で、より自分らしく生きることです。自分がなりたいような自分に、どうすればなれるのか、考えること。自分の生まれた時代を、自分のリズムで、自分らしく歩むこと。そのために他の人が何を言おうが、関係ありません。まず自分たちが幸せになること。それが一番大事なんだと、僕は信じています。

 自分らしく生きたいけど、あと一歩が踏み出せないという方へ。僕はそう思い悩んだとき、自分の心のタンスから引っ張り出してくる言葉があります。