「大蔵省はことし七月上旬に、この報告日時を同じ昨年の三月三十日付だったこととし、記者会見をする場合も三月中だったと説明するように指導していた」(日本経済新聞1991年10月2日)

 この指導に従うということは、証券会社は大蔵省に報告をしたという文書などの日付もすべて書き直さないといけない。つまりは、大蔵省という組織は、自分たちの虚偽答弁を誤魔化すため、監督企業に「改ざん」まで命じていたのだ。

 繰り返しになるが、これは別に首相や有力政治家から命じられたり、忖度をしたりしてやったわけではない。あくまで大蔵省という組織のメンツ、ガバナンスを守るために自分たちで進んで手を染めた「違法行為」だ。

組織の不正カルチャー、モラルの低さは
上司から部下へ引き継がれる

 そこで想像していただきたい。このような虚偽答弁・改ざんを当たり前のようにやっていた組織が、国会で虚偽答弁をしたり、近畿財務局の職員に文書改ざんを命じていたのだ。安倍首相への忖度があったのは間違いないだろうが、なんでもかんでも「政治が悪い」で片付けることに違和感はないか。少なくとも、1年以上もマスコミをあげて大騒ぎをするのなら、政権批判を繰り返すだけではなく、大蔵省時代から続く不正カルチャーにもメスを入れるべきではないか。

「そんな30年も前の不正が関係しているわけないだろ」と怒る人もいらっしゃるかもしれないが、三菱電機の検査不正が35年続いていたことがわかったという先日の報道や、神戸製鋼のデータ不正が40年以上前から続いていたという事実からもわかるように、組織の不正カルチャーは30年くらい平気で継承されるものなのだ。

 上司から部下へ、その部下がさらに新入社員へという感じで、組織のカルチャーや独自のノウハウが継承されていくように、「表向きはダメってことになっているけど、実際はこれくらいのことはうちの会社じゃみんなやっているよ」なんて感じで、モラルの低さも後世へと引き継がれていく。中央省庁のようにプロパーが圧倒的に多く、人材の新陳代謝がほとんどない閉鎖的な組織であればなおさらだ。