何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、“あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!

定年後<br />バリバリ稼いでも<br />年金をカットされない<br />裏ワザとは?Photo: Adobe Stock

定年後も力いっぱい働きたい人はどうする?

 本書で詳しく説明していますが、働きながら年金をもらう人は、給料の額によっては年金を減らされてしまいます。特に現状、65歳未満の人は給与と年金の合計額が28万円を超えると全部または一部の年金がカットされてしまいます(2022年4月以降は、65歳以上と同じ47万円超となります)。

 一定の年齢以上の人だけがもらえる「特別支給の老齢厚生年金」はもちろん、65歳より早く年金をもらい始める「繰り上げ」受給の年金もしかりです。

 これでは、「定年後も力いっぱい働きたい!」という人は、「特別支給の老齢厚生年金」をもらい損ねたり、年金を早くもらいたくても「繰り上げ」受給を選択できません。

厚生年金に加入しない働き方

 でも、「力いっぱい働いても、年金を減らされない」方法があるのです。

 実は、給与と年金を調整されるのは、厚生年金に加入して働いている人だけです。

 厚生年金に加入さえしなければ、いくら稼いでも年金を減らされることはありません(厚生年金に加入しないということは、会社の社会保険に加入しないということです)。

 会社の社会保険に加入しないで働く、というのは、個人事業主として、会社と業務委託契約などを結ぶということです。こう聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれませんが、実際この形で働いている人もたくさんいます。社員としての雇用契約ではありませんが今までの知識や経験を活かして働くことができます。

 会社にとってもメリットがあります。社員ではないので、社会保険料を負担しなくてもよくなりますし、必要がなくなればいつでも契約を解除することもできます(これはこちら側にはイタい話ですが)。今は、いろいろな働き方が認められ始めていますので、会社に「業務委託契約」での働き方を申し出てみると、了解を得られる可能性はあると思います。

社会保険を完備していないところを狙う方法も

 自分が個人事業主として業務委託契約を結ぶ以外にも、社会保険に加入しない方法があります。社会保険に加入していない個人事業主などのもとで働く方法です。法人だと、社長1人しかいない小さな会社でも社会保険への加入が義務付けられています。しかし、会社組織になっていない個人事業は、従業員が5人未満であれば社会保険に加入する義務はありません。再就職先を探す時に、その事業者が社会保険に加入しているかどうかは、会社案内で確認できます。

究極は、会社員として社保のメリットを受け、個人事業で稼ぐ!

 実は一番おトクなのは、社保に加入している会社に勤めながら、自営業をすることです。

 勤め先では、年金が減らされない程度の低い給料に抑えてもらいます。一方、副業で個人事業主としてしっかり稼ぐことができれば、年金も減らされることがない上、社会保険料も低く抑えられます。

 完全に自営のみだと国民健康保険に加入することになりますが、自営業でバリバリ稼ぐと、国民健康保険料も高くなってしまいます。

 でも、会社で社会保険料を払っていれば、国民健康保険に加入する必要はありません。給与が少なければ負担する社会保険料も少なくてすみます。これなら、自営業でバリバリ働いても、社会保険料が高くなることはありませんし、年金も減らされないですむ、というわけです。

 社会保険に加入するには、1週間の労働時間が20時間以上、月額賃金が8・8万円以上(年収106万円以上)などの条件があります。条件を満たせるよう、詳細は会社と相談することをおすすめします。