TwitterやFacebook、Instagram、LINE、YouTube、TikTok……商品・サービスの認知拡大やブランディング、自社製品のファンづくりなど、企業にとってSNS活用は欠かせないものとなっています。連載「SNS企業公式アカウント活用入門」では、企業がどのように公式アカウントを運用・活用していくべきか、基礎的な部分から解説していきます。1回目は「そもそも企業にとって、SNSの公式アカウントがなぜ必要なのか?」を考えます。(ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 鈴木朋子)
約10年前から、企業の公式アカウントが注目されるようになった
「中の人」という言葉をご存じだろうか。キャラクターなどの着ぐるみの中に入って演じている人のイメージで、表立って活動せず、裏方として運営している人を指すことが多い。近年ネットでは、この「中の人」という言葉は、SNSで企業公式アカウントを運営する人を指すようになっている。
企業公式アカウントが注目されるようになったのは、10年ほど前だ。当時のTwitterは企業の情報を硬い表現で発信していた企業アカウントがほとんどだったが、ダジャレを含んだユーモアあふれる投稿を繰り返すアカウントが人気を集め、「公式(硬式)アカウント」ならぬ、「軟式アカウント」としてブームとなった。
しかし、軟式アカウントの運営はたやすいものではない。最初は調子よくフォロワーが増え、人気アカウントになったとしても、たったひとつの投稿が命取りになることもある。文章がふざけすぎていたり、個人が出過ぎたり、時には個人のアカウントと間違えて公式アカウントでプライベートな赤裸々な投稿をするなどして、炎上騒ぎになることもあった。責任の大きさに悩んだり、投稿ミスを嘆いたりする“中の人”のツイートをTwitterで見かけることは珍しくない。
言うまでもないが、SNSで炎上すると大ごとになる。個人でも大変だが、企業の公式アカウントともなればなおさらだ。RT(リツイート)やDM(ダイレクトメッセージ)によるSNS上での抗議は雪だるま式に増え、引っ切りなしにかかってくる苦情電話やマスコミへの対応も必要となる。さらにはネットに残り続ける痕跡により、企業は長年にわたって大きなダメージを受けることとなる。
大きなリスクが発生する可能性があるならば、企業公式アカウントなど始める必要はない……そう考える企業もあるだろう。しかし、SNSを無視できない今の世の中で、本当に公式アカウントは必要ないのだろうか。