揺れや騒音は少なく
元通勤電車と思えない乗り心地

 そんな「WEST EXPRESS 銀河」の紀南コースは、京都駅31番線を21時15分に出発するところから幕を開ける。新快速が25分足らずで走破する京都駅~新大阪駅間を、途中時間調整しながら55分かけて走り、22時10分に新大阪に到着。その後、天王寺駅から阪和線に入り、和歌山を目指す。

 和歌山駅到着は23時42分。ここで1時間18分の長時間停車があり、駅東口から徒歩4分のラーメン店「まる豊」で中華そばが乗客に振る舞われる。和歌山ラーメンの特徴である豚骨しょうゆスープと細麺の組み合わせが夜食にちょうどいい。

 列車は和歌山駅を深夜1時に出発し、紀伊半島の奥へと紀勢本線を進んでいく。次の串本駅に6時4分に到着するまで車内は消灯され、しばしの眠りについた。筆者に割り当てられた座席は普通車指定席だったが、通常の座席よりも深くリクライニングが可能な構造となっており、また前の座席との間隔もグリーン車並みの幅を確保しているため、眠りにくいということはなかった。

 昼間運行される特急「くろしお」は紀勢本線を最高速度時速130キロで駆け抜けているが、「WEST EXPRESS 銀河」は時速60~80キロほどで緩やかに進んでいくため、揺れや騒音も少なく、元通勤電車とは思えないほどに乗り心地がよい。

 7月上旬、紀伊半島の夜明けは4時半ごろだ。海辺を走る車窓から差してくる朝日でだんだんと目が覚めてくる。次の停車駅は紀伊半島の先端、本州最南端の駅として知られる串本駅だ。

 串本駅に6時4分に到着すると、ここでまた1時間56分の長時間停車を行う。その間、乗客たちはバスで国の天然記念物である「橋杭岩(はしぐいいわ)」を観光する。約900メートルにわたり一直線に大小の奇岩が並び立つ絶景を楽しんだ後は、すぐ近くにあるレストラン「空海」で、朝食として串本町で取れるカツオを使ったタタキ丼に舌つづみを打った。