田中文科相の新設大学認可を巡る一連の騒動は、擦った揉んだの末に、ひとまず、常識的な線に落ち着いたように思われる。しかし、少子高齢化にもかかわらず、年々大学の新設が認可され、大学数が増え続けていくことに、一抹の疑問を抱く向きは少なくない。わが国の現在の大学の在り方について、100%納得している市民は、恐らく決して多くはないであろう。今回は、大学改革について考えてみたい。
予算は大学にではなく
学生につけるべき
わが国の大学には、大量の国費(税金)が投入されている。文科省のHP(大学関係者の皆様へ)によると、今年の大学関係予算は、総計でおよそ2兆円近くにのぼる。在学者数は約300万人であるから、1人当たり、約65万円の税金が費消されている計算になる。
わが国の大学等進学率は57.6%(2011年)、これに対して、アメリカの進学率(フルタイム)は54.5%(2008年)、英国の進学率(フルタイム)は66.1%(2008年)、フランスは41.0%(2009年)、ドイツは26.5%(2009年)であるから、わが国の大学の数自体は、決して少ない訳ではない。
また、大学に対する公財政支出の投入割合を見ると(2008年)、わが国の0.5%(対GDP、これに加えて私費負担が1.0%)に対して、アメリカが1.0%(私費負担1.7%。以下同じ)、英国が0.6%(0.6%)、フランスが1.2%(0.2%)、ドイツが1.0%(0.2%)となっているので、わが国の高等教育費の水準自体は、欧州諸国と比べればそれほど大差はないが、公財政支出と私費負担の割合が、欧州諸国とは逆転していることが読み取れよう。
このように見てくると、大学に対する公財政支出は、将来的には増やす方向で検討すべきだと思われるが、現下のわが国の厳しい財政状況を勘案すれば、まずは、現行の約2兆円をより効率的に使うことが、何よりも肝要であろう(以上の数値データは、何れも文科省HP「教育指標の国際比較」(平成24(2012)年版)による)。
それでは、どのようにすればいいか。国立大学と私立大学とをどのように按分するか、いくつか割り切らなければならない技術的な問題はあるが、原則として、予算を大学にではなく、学生につければいいと考える。すなわち、前年の学生の在籍数に比例して、予算を配分するのである。