米国では長年、政府支援で特定産業の成長を促す「産業政策」が禁句だった。それが今では民主・共和両党議員の多くで意見の一致をみる珍しい論点となっている。超党派の支持を得て米議会を通過しようとしている二つの法案は、研究開発・科学教育向けや半導体工場への補助金向けの連邦支出を最大2500億ドル引き上げる内容だ。両党が突然歩み寄った理由は秘密でも何でもない。中国との競争に対する懸念が高まっているからだ。これらの法案とは別に、約1兆ドル(約110兆円)の超党派インフラ投資法案も同じような理由で売り込まれている。米国はインフラ整備や研究開発、次世代の米国人プログラマー・エンジニアの訓練向けに公共支出を増やす必要がある。このことに疑いの余地はほぼない。台湾と韓国が半導体部門で実証しているように、優遇税制などの措置で戦略産業を支援することも有効だろう。だが米国は、「勝ち組」企業を直接選ぼうとしたり、国の支援と保護主義を結びつけたりする罠(わな)に陥らないようにすべきだ。中国では、そうした政策の組み合わせが好ましくない結果につながることがあった。正真正銘のハイテク大手ではなく、国の補助金で食いつなぐ質の低い企業と過剰設備を生み出すことが多かった。