タイで新型コロナウイルスの感染が再拡大している。感染力の強いデルタ株が猛威を振るっている。いったん緩和していた各種の規制も再び強化された。経済活動の低迷、それに伴う通貨バーツ安は、現地に進出している日本企業に悪影響を及ぼす。タイでの感染再拡大は日本にとって対岸の火事ではない(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)。
死亡者も増加し
感染状況が急速に悪化
足元では世界的に感染力の強い変異株(デルタ株)による新型コロナウイルスの感染再拡大の動きが広がっている。アジア新興国、なかでもASEAN(東南アジア諸国連合)は感染拡大の中心地となっている。
ASEANのなかでは、マレーシアにおいて感染が急速に拡大の動きが広がり、非常事態宣言が発令されるとともに行動制限が再強化されたほか、同様の動きがインドネシア、タイ、ベトナムに広がっている。
タイにおいては、6月半ば以降に新規陽性者数の拡大傾向が強まったものの、当初は刑務所におけるクラスター(感染者集団)の発生といった局所的な動きにとどまっていた。しかし、その後は市中感染が広がるとともに新規陽性者数の拡大ペースに拍車がかかっている。新規陽性者数の急拡大を受けて医療ひっ迫に陥る懸念が高まり、死亡者数も増勢を強めており、感染状況は急速に悪化している。