ワクチン接種完了マウント発生か
SNSに見られる完了報告の危うさ

 一方、比較的早い段階で接種を済ませた人はどう考えているか。Cさん(35歳女性)は7月半ば、勤め先の職域接種を終えた。

「『いち抜けた!』という感じです。他の人より早く終わらせられてラッキーでした。といっても国内の状況は依然として予断を許さないので、接種が済んだからといって私の生活が何か変わるわけではありません。ただ、感染への不安が減ったのは本当によかったです。接種完了後、『今までは実はすごく(感染に)おびえていたのだ』と気づきました」

 接種完了で気分的にだいぶ楽になったCさんであるが、「大っぴらに喜び過ぎるのはよくないのではないか」と内心の葛藤を話してくれた。

「SNSで他の人が『完了!』と喜んでいる投稿を見かけるんですけど、あれが『ちょっと危ういな』と感じます。本人は喜んでいるだけのつもりでもそれを見てあまり面白くなく思う未接種の人もいるのではないかと思えるからです。

 また、中には『勤め先が一流企業だから職域接種が受けられた。接種完了報告はつまり勤め先自慢』みたいに思える人もいるのです。そうした投稿を見ているうちに、『ワクチン接種はもっと繊細に扱われるべきトピックなのでは?』と考えるようになってしまいました。と、こんなことをグルグル考えている私こそが性格暗くて、みんなそこまで気にしていないのかな、と思ってみたり」

“ワクチン接種完了マウント”とでも呼ぶべきか。場合によっては接種完了報告がそのように利用されることもあるのであろう。一部で時としてマウントに利用される程度には、接種時期の差が人々の心に暗い影を落としている、と見ることもできる。

 国内のほとんどの人にとってワクチン接種は他人事でなく私事であるから、関心が高いし、それにまつわる感情の振れ幅も大きくなる。接種時期に“差”が生まれる以上、そこに嫉妬や羨望が生じるのも仕方ないことである。

 とはいえ、“接種時期の差”は国内の接種がすべて完了すれば消失する、今だけ見られる現象である。「近日中には皆イーブンになる」と構え、心を乱され過ぎずに現況に向き合いたいところである。