AIにできること、
人間にできること

 広告を運用しながら成果を計測する。

 本書で詳説したCPOなどの指標を見ながら、広告出稿のコントロールを行っている。

 AI時代に考えなくてはならないのは、AIの仕事とは何か、人間の仕事とは何かを見極めることだ。

 マーケッターの中には、「AIに任せれば大丈夫」と言う人がいるが、そんなことはない。

 AIにできないが、人間にできることは2つある。

1.手作業……体を使って何かをすること
2.
企画……新しい何かを考え出すこと

 グーグルやフェイスブックに商品広告を出稿したとしよう。

 グーグルやフェイスブックは適切と思われるユーザーを選び、広告を表示する。

 そして広告をクリックした人、購入した人などのデータを蓄積する。

「どんな人が購入しているか」をAIが学習し、その後、購入しそうな人に優先的に広告を表示する。

 AIの指示に従い、人間が手作業で広告を出稿する。

 これが現在の大きな流れで、「AIに任せれば大丈夫」という発言につながる。

 しかし、それでは利益につながる広告は打てない。

 AIは「AとBのどちらがいいか」はわかるが、「なぜAがいいか」「なぜBが悪いか」はわからない。

 まして「A、BよりもCのほうがいいのではないか」とは考えもしない。

 だから企画(クリエイティブ)が重要だ。

 とりわけ差別化戦略を図る必要がある。

「AIに任せれば大丈夫」と考えると、次のようなことが起こる。

「チーズケーキ」を売る広告を「20代女性」に配信しようとしたのに、甘いものが苦手な「20代女性」にも配信されてしまう。

 一方でチーズケーキが好きな40代男性はその広告に触れる機会すらない。

 AIのアルゴリズムを理解し、商品をターゲットにマッチングさせる戦略を立てる。これは人間の経験値がまさる領域だ。

 具体的に言えば、AIの学習環境を整える。

 学習は確率論から成り立っているため、スタートダッシュのコンバージョンが間違えていた場合、その要件が継続されてしまう。

 お茶飲料AとBがあった場合、「Aが好きな人」「Bが好きな人」と学習させずに、「お茶飲料が好きな人」と学習させてしまうと、AもBも同じ広告の動きをするので差別化が図れないのだ。