新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業が打撃を受け、倒産事情も激変した。そこでダイヤモンド編集部は上場企業3787社の「倒産危険度(Zスコア)」を総点検。リスクの高い493社をあぶり出した。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#5では、倒産危険度ランキングのワースト201~300位を紹介する。絶好調の海運3社のうち1社がランク入り。3社の危険度の“格差”はどこでついたのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
コロナ禍で“地獄から天国”に
コンテナ不足特需に沸く海運3社から1社がランク入り
“お荷物”事業が一転してドル箱ビジネスに――。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、“地獄から天国”を味わった業界がある。海運業界だ。
リーマンショック以降、不況が続いていた海運業界。とりわけ問題児だったのがコンテナ船ビジネスだ。世界的な船余りや運賃下落といった構造問題を抱えて赤字を垂れ流し、世界各地で再編が進んだ。海運大手3社も2018年にコンテナ船事業を切り離して統合するなど、構造改革に取り組んできた。それでも苦境を脱するには程遠く、当初のもくろみ通りには進まなかった。
そこに追い打ちをかけたのが、20年春からのコロナの世界的な流行だ。世界の経済活動がまひして海の物流は停滞。海運業界の業績悪化は避けられないとみられていた。
そんな状態が20年秋に一変する。世界的なコンテナ不足が問題として急浮上したのだ。
コンテナの一大生産地は中国だ。もともと米中貿易摩擦の悪化の懸念からコンテナ製造を絞っていたところにコロナ禍が直撃。先行きを悲観してコンテナの製造量が大幅に減った。
ところが20年秋以降、中国の経済活動が急回復し、中国からの輸出が想定以上に増えていく。加えてコロナ禍の影響で、米国の港での人手不足が深刻化。コンテナが米国の港に滞留する事態となってしまった。
このコンテナ不足問題で、コンテナ船の運賃は急騰。日本海事センターによれば、21年6月の中国・上海発米ニューヨーク行きのコンテナ船の運賃は、40フィートコンテナ1個当たり1万0340ドルで、前年同月の3070ドルから3倍以上に跳ね上がった。21年1月の6560ドルと比べても、5割以上の値上がりだ。
コンテナ船ビジネスの特需で、7月下旬から8月上旬にかけて日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運3社は、22年3月期の最終利益の見通しをそれぞれ大幅に上方修正している。
今回の倒産危険度ランキングは21年3月期の決算をベースにしているため、来期の海運3社の結果は大きく改善しそうだ。ランキング201~300位に、業績が絶好調へと転じつつある海運3社のうち1社がランク入りし、残る2社との危険度に“格差”がついた。
ランキング201~300位の顔触れを見ていこう。