大地震に対する不安で眠れなくなったり、新型コロナの感染を恐れて手がボロボロになるまで手洗いをしてしまったりと、過剰な危機感を抱いている人はすでに災害不調に陥っている可能性が高いという。

 また、中高年の災害不調はホルモンバランスの減少も深く関わっているという。

「加齢とともに、男性はテストステロンなどの男性ホルモンが減り、女性はエストロゲンなどの女性ホルモンが減少します。その結果、さまざまな症状が表れることを『更年期障害』と呼びます。女性はホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、発汗)などの身体症状が現れやすく、男性の更年期障害は気分の落ち込みやイライラなど、精神症状が表れやすいのが特徴です。更年期の症状が出ない人もいますが、男性の場合は大きな災害に遭ったり、コロナ禍でリモートワークになったりと、大きな環境の変化が更年期障害のきっかけになるケースもあります」

 このように災害不調は、災害に加えホルモンバランスや加齢など、複数の要因が絡み合って発症をする。実は、工藤氏自身もこのコロナ禍で“災害不調”に陥った経験者でもある。

「僕は福岡県みやま市に住んでいるのですが、メディア出演のために東京に出張する機会があります。昨年の3月に上京したとき、華やかなイメージのテレビ局で行われていた、物々しいほどの感染症対策を見て、そのギャップに気圧され、大きな不安に駆られたんです。福岡に帰ってきてからは、東京で感染していたらどうしようと考えだすと止まらず、感染の可能性を考えて病院内で2週間の自主隔離生活を送りました。その間、漠然とした不安に襲われて眠れなくなり、深夜に過食してしまったこともあります。やる気が起きないなど、うつのような症状も出ました。いわゆるコロナうつですね。自分がコロナうつを経験したことも『災害不調』執筆のきっかけになりました」

 工藤氏の著書では、災害不調に対する改善策にも多くページを割いている。また今年は、東日本大震災から10年という節目の年でもあり、今もなお災害不調に悩む人の一助になれば、と工藤氏は語る。

災害不調を改善する
「原始的な生活」とは

 生活の質を下げ、認知症のリスクも上げる“災害不調”を脱するには、生活習慣と体質の改善が急務だ。

「当院では災害不調が疑われる場合、西洋医学だけでなく漢方薬とカウンセリングを行って症状を抑えますが、そうした治療が受けられないケースも多いです。精密検査を受けても原因がわからず、身近に災害不調の改善に適した医療機関がない場合は、まず “原始的な生活”を送ってみてください」