4.公平感の欠如:
評価が不公平、不透明、不的確である

 さらに上司に対する信頼性を決定的に失わせるものは、人事考課や仕事へのフィードバックである。日々の仕事の何を評価して何を評価しないか。これを見れば、上司が仕事の何を見ているかが明らかになる。もちろん不満の出ない評価というものはなかなかないが、そもそも評価していることがピント外れであったり、評価の中身が筋違いや事実誤認であったりすると、「この人、何もわかっていないのだなあ」と部下から見切られることになる。特定の人の評価だけを間違える人もいなくはないが、多くの場合、ほぼ全員に対してピント外れの評価をするから、部下たち全員の信頼を失う。

 現在のように、会社で顔を合わせることが減り、部下の日々の仕事が見えない状況にあっては、仕事のアウトプットを評価する能力が必要となる。中身のない見栄えだけよいリポートを激賞したり、時代遅れのコンセプトを「面白い」と持ち上げたり、仕事の本質と関係ないどうでもいい細部をねちねち叱責したりすると、これまで以上にアウトプットの評価が重要な時代にあっては、「使えない上司」としてどんどん相手にされなくなる。

 上記のような欠如があると、部下から「使えない上司」の烙印を押されている可能性が高い。1から4までのうち1は、まずは、部下がやっている業務を明確に洗い出しチェックリストを作って、経営からもらった情報と照合しながら、必要事項を部下に伝える練習をする訓練をすれば身に付けることができるが、2から4は一朝一夕ではどうにもならない。あなたは大丈夫だろうか。

「使えない上司」としての
今後の処世術

 もし、あなたが使えない上司だったとしたら、生き残れるだろうか。実はそれは会社によって異なる。業績を重んじる会社では、「使えない上司はいつの間にか外される」のがルールで、それが社内に周知徹底されている。したがって必ず上司の上司が業績の低いその上司の部署の分析を行って、使えない上司を改善指導する。業績が低いままで捨て置くと自分の責任問題となってしまうからだ。したがって、「使えない上司」は矯正され、それでも使えないとなると、何らかの形で外される。これを厳しい措置と考えるか、当たり前と考えるかは人や会社によって異なるだろう。

 いまここで初めて「私は使えない上司だけれども大丈夫かな?」と思ったなら、おそらく指導も左遷もされていないのだから、それほど高い業績を求めていない会社にいると思っていい。部下も、上司の上司も、とくに「使える上司」を求めていないとも言える。「使えない上司」が問題になるのは、上司の上司や、部下に、目標を達成したいという強い意志があり、それを実現するうえで「上司が役に立たない」ことが邪魔になる場合だからだ。

 目標を達成したいと強く思っていない人が多数の会社なら、むしろ使える上司のほうが、仕事を増やす余計な人となる。よって、あなたは優秀な部下が転職してしまうかもしれないこと以外はそれほど心配しなくても大丈夫だろう。定年退職時までに、会社が売却されたり、業績不振でつぶれたりしなければどうにかなる。ただし、最後まで逃げ切れそうか、逃げ切れなさそうか、この見極めだけはくれぐれも慎重に。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)