「病床再編」に反対する一部の病院経営者
「おいしい病床」を保持したい

 冷静に考えれば当然だ。「急性期病床」と申告しておきながら、重症患者を受け入れてくれないのでは税金の無駄遣い以外の何ものでもない。「なんちゃって急性期病床」が増えても、地域内の限られた医療従事者の分散が進行するだけで、救急患者のたらい回しなどは一向に解消されない。

 そこで、都道府県では2025年の医療体制を示す「地域医療構想」を策定し、急性期病床の比率を下げて、リハビリなどを施す回復期病床に切り替えるという、「病床再編」というシナリオを描いていた(参照:厚労省資料PDF:)。地域内の「なんちゃって急性期病床」が減れば、本当の急性期医療を行う病院に医師や看護師など医療資源を集中できるはずだ。医療費の無駄も削減できるので、一石二鳥だ。

 しかし、これにノーを突きつけているのが、一部の病院経営者である。

「多くの病院はベッドの役割分担に抵抗している。医療スタッフの配置が手厚い急性期病床は1日4〜5万程度と、回復期より2割ほど入院代が高いといわれる。急性期を減らすと収入減につながるのを懸念しているのだ」(日本経済新聞2019年3月3日)

 もっとストレートに言ってしまえば、「急性期病床の方がおいしい」のである。インセンティブがつけば当然、自分たちの医療資源を度外視して、無理をしてでも急性期病床をつくっていく病院も増える。この結果が、「世界一急性期病床が多い」という日本の異常な状態を招いたというのは容易に想像できよう。

 そして、これは裏を返せば、一部の病院にとって、「なんちゃって急性期病床」というものが、もはやなくてはならないものになっているという現実を物語っている。