誰が次期首相でもスタートは高支持率。ただ、コロナ対応の医療体制強化ができなければ短命政権に終わるリスクがある。また、有力候補はいずれもアベノミクスから距離を置く。(BNPパリバ証券チーフエコノミスト 河野龍太郎)
自民党総裁選挙は、当初現職の菅義偉首相と岸田文雄前政務調査会長の一騎打ちが予想された。しかし、菅首相が退陣を決めたことで、一気に混戦模様となった。
国民的人気が高い河野太郎行政改革担当相は、現職閣僚として菅首相を支えるという制約がなくなった。同様に国民の人気が高い石破茂元幹事長も出馬を検討しているが、9月7日時点では、河野氏支持に回るという観測も広がる。
安倍晋三前首相の支持を取り付けた高市早苗前総務相も出馬するとみられ、不確実性は残るが、主にこの4人ないし石破氏を除く3人の競い合いになるとみられる。このほか、野田聖子元総務会長、下村博文政調会長の出馬も取り沙汰される。
昨年9月の自民党総裁選は、安倍前首相の任期途中の辞任を受けた後任選びだったため、党員投票は省略され、国会議員中心の投票となり、細田派、麻生派、二階派、竹下派、石原派の5派閥の支持を受けた菅氏が圧勝した。
今回は党員投票が大きく影響し、全く異なる展開が予想される。そもそも、1990年代以降の選挙制度改革で、派閥の力は相当に低下した。また菅首相が退陣表明に至ったのは、新型コロナウイルス感染拡大への対応でつまずき、内閣支持率が低下したためだ。衆議院選挙を目前に控え、自民党議員は派閥領袖の声より地元の声に耳を傾けざるを得ない。
過去3度の衆議院選挙で自民党は大勝したが、その結果、自民党では衆議院議員のうち、当選3回以下の若手議員が46%を占める。コロナ対応で政権に逆風が吹く中、選挙基盤が盤石ではない若手議員は、選挙の顔となる候補を党首に選ぼうとする。