「最大の理由は、売り場の問題です。コンビニで通常の温かい焼き芋を販売しようと思うと、肉まんや揚げ物と同じカウンターフーズの扱いになります。しかし、あのエリアはすでに売れ筋の商品が多数並んでいて、焼き芋に限らず新商品の参入がとても難しい場所です。焼き芋は什器も場所を取るし、商品自体も結構かさばるので、1個で通常の揚げ物の2~3個分のスペースが必要。導入のハードルも高く、あまり在庫数も確保できないとなると、取り扱いづらい商品になります」(田矢氏、以下同)

 一方、冷やし焼き芋であれば陳列棚に並べることができるため、専用の機械も不要だ。また、「さつまいも」を使った商品というと「秋の味覚」というイメージがあり、売り上げが季節に左右される心配もあるが、近年は家電の発達により、時期限定の概念が希薄になりつつあるという。

「冷暖房を使用して室温が調節できる生活環境になってから、あらゆる商品が季節を問わず通年で取り扱われる流れができてきています。アイスクリームは冬になると売り上げが落ち込む印象をお持ちでしょうが、暖房の効いた室内で食べる人がほとんどなので、ここ数年は冬でも安定して売れています。そうした流れの変化が、今後、さつまいもを使った商品にも及ぶかもしれませんね」

仕入れの問題などから
メーカー品が主流

 冷やし焼き芋同様に、専門店で人気を博し、コンビニに進出してくる食べ物は数多い。近年では「タピオカドリンク」や「マリトッツォ」などが思い浮かぶだろう。

「これらのトレンドグルメをコンビニで取り扱おうとしたとき、メーカー商品を置くか、コンビニオリジナル商品を開発するか、各社が商品戦略を選択します。冷やし焼き芋は、メーカー品を置いているコンビニが多い印象があります」

 メーカー品を置くか、それともオリジナル商品を置くかという議論は、冷やし焼き芋以外の食べ物でも例外なく行われる。「タピオカドリンク」を例に挙げてみると、これはコンビニでの商品開発には不向きだったため、メーカー品が多く取り扱われたという。

「冷やし焼き芋も、オリジナル商品としての開発がしづらい商品です。その理由は、原材料であるさつまいもの安定した在庫確保ができないから。冷やし焼き芋は、見た目の整っているさつまいもを、切ったりつぶしたりせずそのままの形で使う商品です。しかもコンビニは大手であれば全国に数万店も出店していますから、サイズや見た目が規定通りのさつまいもを1日に数万個単位で仕入れる必要があります。自社のルートでこれだけ大量のさつまいもを仕入れることが困難なため、メーカー品が多く並んでいるのだと思います」

 さらに、産地や品種といったさつまいもならではの問題が、仕入れをより難しくしているのだとか。

「さつまいもを使った商品は、鹿児島産なのか熊本産なのか、安納芋なのか紅はるかなのかといったように、産地や品種が売り上げを大きく左右します。コンビニで売るとき、価格を200~300円くらいに設定しないと利益が出ないので、企業は人気の産地の、名のあるブランド芋を使って冷やし焼き芋を作りたいところでしょうから、仕入れは余計に大変です」