カップスイーツとして
定番化の可能性も

 見た目とサイズが合格値に達しているさつまいもを仕入れるだけでも難しいのに、さらに産地と品種までクリアしたものを探すのは、かなり至難の業だ。しかし、この仕入れの問題さえ解決すれば、冷やし焼き芋はコンビニの一軍商品に入れるかもしれない。田矢氏も「ポテンシャルのある商材だと思います」と語る。

「冷やし焼き芋は、アレンジがしやすい食べ物であることも魅力のひとつです。専門店でよく見かけるようにバニラアイスを乗せて食べたり、ジャムやクリームのようにパンに塗って食べたりできます。シンプルだからこそ、さまざまな食材と合わせやすい。幅広いアレンジが可能なことは最近のトレンドグルメの秘訣(ひけつ)だと思います」

 前述の特長も踏まえ、冷やし焼き芋は今後、どのように成長していくのだろうか。

「あくまで個人の予想ですが、スイーツのポジションで進化していくのではないでしょうか。丸々1本をそのまま使うのではなく、プラカップに入るサイズに切ってカップスイーツとして販売すれば、さつまいも自体の見た目や大きさにはそこまでこだわらなくてもよくなります。専門店ではやっているような生クリームをトッピングしたものなど、人気が出そうな気がしますね。最近では、セブン-イレブンが『7プレミアムまるで濃蜜芋」というアイスを発売しているので、秋冬はアイス売場も活性化するかもしれません」

 冷やし焼き芋の購買層は、専門店にしろ、コンビニにしろ、女性が主だ。今後スイーツとして展開していくとなると、より女性だけがターゲットになってしまいそうな気がするが、それは杞憂(きゆう)だと田矢氏は指摘する。

「これまでに専門店でブームになってコンビニに登場してきたスイーツと、冷やし焼き芋の大きな違いは、老若男女になじみがあるかどうか。たとえば『マリトッツォ』なんかは名前を聞いただけでは味がイメージできない人も多いでしょうが、『冷やし焼き芋』と聞けば、多くの人が大体の味の想像がつきますよね。冷やしてあるので珍しいですが、そもそもは焼き芋という慣れ親しまれた食べ物なので、たとえスイーツコーナーに置いてあっても性別や年齢を問わずに多くの人々が手に取ると思います」

 近年、温暖化の影響で秋でも気温の高い日が続いている。冷やし焼き芋は、涼しげに秋を満喫したい人にぴったりの食べ物といえるだろう。