インターネット通販に押され、価格下落の波が押し寄せている Photo by Naoyoshi Goto

 家電量販市場の収縮が止まらない。売上高の2割ほどを占めるテレビ関連商品の落ち込みに底が見えないのだ。

 2010~11年半ば、業界は地上デジタル放送への切り替えと政府の家電エコポイント導入という特需に沸いた。直前までテレビの年間販売台数は約1000万台で推移していたが、この2年間で4000万台を売ってしまった。それは需要の先食いとなり、11年半ばから販売台数は激減。12年は600万台程度になるとみられる。

 最大手、ヤマダ電機の一宮忠男社長は11月9日の決算説明会で、テレビ販売の「来期の予想は難しい」と発言。家電メーカー側の予測として、「来年度は今年度と同程度。1000万台に戻るのは3年後」と紹介するにとどまった。

 販売数急減以上に関係者が気をもんでいることがある。インターネット通販に押される形で急激に進んでいる価格下落と、それに伴う利益率の低下だ。

 昨年までは、家電量販店の店頭でネット通販の価格を店員に伝え、価格交渉をしようとしても、「ネットはネット」という対応がほとんどだった。それが今年春先以降、ネットの最安値に店頭価格を近づける動きが、大手家電量販店で目立つようになっているのだ。

 テレビの単価は昨年度に比べて、「85~88%に落ちている」(家電量販店首脳)。現状では、ネットの最安値に近づくような価格交渉の広がりを知っている消費者は少ないし、すべての商品が対応しているわけではない。しかし、いったん壊れたリアルとネットのすみ分け構造を、元通りにすることは難しい。利益率の低下は一時的なものではなくなる可能性がある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

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