人気でも、言語明瞭意味不明の河野候補
「保守」を解さず、経済政策もぼんやり

 三番目に立候補を表明したのは河野太郎候補。世論調査ではぶっちぎりの人気を誇り、以前からワンポイントリリーフでの総裁、首相就任は取り沙汰されていた。

 総裁選政策のキャッチコピーは「日本を前に進める」。まるで、あの“西の方”の地域政党や、東京都議会で前回まで第一会派だった地方政党のそれのようだ。「前に進める」と言っても、言語明瞭、意味不明である。

 河野候補の政策ビラの冒頭には「温もりのある国へ」と題するメッセージが記載されている。その中に自民党は保守政党であるとし、保守主義について次のように記載されている。

「保守主義とは、度量の広い、中庸な、そして温かいものであると私は思います。そして、平等な機会が提供され、努力した者、汗をかいた者が報われる社会、勝者が称えられ、敗者には再び挑戦する機会が与えられ、そして平等に競争に参加できない者をしっかりと支える国家を目指す」

 保守とは何かについては、以前拙稿「真の「保守」「リベラル」の観点から見直す衆院選の争点」、ちょうど前回の衆院選に際した書いたものの中で、中島岳志氏の著書から引用して説明しているので、そちらを参照いただきたい。

 同稿においても引用している通り、保守主義とは、「人間や社会の不完全性を前提としつつ、長い歴史や伝統、それらの蓄積を守り生かしながら、時代時代の変化を受け入れて漸進的に改革を進めていく思想であり立場」である。

 一方で、河野候補が記載しているのは機会の平等の話であって、保守とは関係がない。それどころか、保守とは正反対の、バラバラの個人を前提とする、エリートの設計主義による社会像である。つまり河野候補は、最初から言葉の意味を解さず使って、見事にコケているわけである。

 では政策はというと、「命と暮らしを守る政治」、「変化の時代の成長戦略」、「新しい時代のセーフティーネット」、「国を守り・世界をリードする外交・安全保障」および「新しい時代の国のかたち」の5つの分野から成るが、いずれも内容がボヤッとしていて、具体的に何をしたいのかが見えてこない。

 例えば「温もりある地域経済と社会を支える中小企業や個人事業主を守ります」など、どう守るのか、温もりのある地域経済とは何なのか、さっぱり分からない。中小企業を規制や財政措置によって守るのか、事業承継と称した、外資も含めたM&Aの推進によって形だけ中小企業を守るというより残すのか、雇用はどうなるのか、全く見えない。

 河野候補といえば、人口減少への対応のための移民受け入れ推進や、農業を土地と切り離して考えることを主張したり、行政事業レビューでは国の事務事業の削減や、効率化と称した削減に血道を上げる、財政再建のための緊縮財政や増税を主張するなど、緊縮・新自由主義者の代表格のようになっている。「能ある鷹は爪を隠す」のことわざではないが、あからさまな自由主義的な態度を隠すためにぼやかした書きぶりにしたのではなかろうか。

 しかし、冒頭メッセージについて指摘した通り、保守を履き違えた、ただの設計主義者、新自由主義者であることは隠しきれなかったようだ。