依然として不透明感が残る市場において力を発揮する、新しい投資指標をご紹介したい。「マイナス・デルタ償却資産」だ。
償却資産とは企業が保有する土地等を除いた固定資産で、工場設備のように時間とともに価値が減価するもの。マイナス・デルタとは、この償却資産が減っている企業がよいということだ。
実際には償却資産の伸びを同期間の資産の伸びで割って投資指標とする。
なぜ、設備などの資産が増えた企業をマイナスと評価するか? これには有名な米国の2人の学者の研究が裏づけにある。1人は『株式投資の未来』の著者として有名なジェレミー・シーゲルだ。
シーゲルが米国のS&P500銘柄を対象に、設備投資の大きいほうから2割に該当する銘柄群と、小さいほうから2割の銘柄群の株価上昇率を比較したところ、1957~2003年の47年間で平均して年5%程度、設備投資が小さい銘柄のほうが好パフォーマンスとなった。
これには以下の理由がある。
(1)実際には経営者の設備投資実行は遅れがちなため、業界の成長期待のピークは過ぎている傾向がある。
(2)設備投資の多さが設備過剰感につながり、市況悪化によって利益率が低下する。
(3)設備投資はキャッシュのアウトフローとなるため利益を圧迫する。
(4)投資家は設備投資旺盛な企業の成長を過度に期待するため、すでに株価が割高となっている、などである。
もう1人は米ファイナンス業界で著名なシェリダン・ティットマンだ。ティットマンは73~95年の23年間の検証を行なった。
過去3年間の平均設備投資と比べ足元の設備投資がどの程度上回っているかを基準に、米上場企業を5つの銘柄群に分類し、上位2つと下位2つの翌年の平均株価騰落率の差を見ると、下位2つが年間で2%以上上回った。シーゲルと同様、設備投資が多い企業や増えた企業の将来の株価はマイナスとなったのだ。