円安頼みから脱却するインバウンド消費、爆買いからコト消費へのシフトで「10兆円」が視野に京都のお店で着物をレンタルし、観光名所をめぐる外国人観光客 Photo:Sipa USA/JIJI

減少に転じた免税売上高
インバウンド終焉を示唆か

 昨年は記録的な円安が進んだことで為替レートが大きな話題となり、円安進行によるメリット、デメリットが盛んに議論された。しかし今年は一転して円安に歯止めがかかり、その悪影響を懸念する声が上がり始めている。

 その端的な例が百貨店売上高だ。日本百貨店協会が公表する免税売上高は、2025年5月に各社軒並み3~4割のマイナスとなった。これを受けて一部メディアは、円安修正で高額消費の勢いが弱まり、購買単価が減少していると報じた。また訪日(インバウンド)消費はピークアウトした可能性があるとの指摘も出ている。

 しかし筆者は、大手百貨店の免税売上高減少をもって、円安修正がインバウンド消費の失速につながったとする見方に疑問を持っている。

 2025年5月の免税売上高が大幅マイナスとなった主因は特殊要因だ。一年前の2024年5月はジュエリーブランドの値上げ前による駆け込み需要で免税売上高は前年比2倍超の急増となったため、翌年(2025年)5月は反動減となりやすかった。

 そもそも百貨店の免税売上高は、インバウンド消費の一部を映し出しているに過ぎない。2024年のインバウンド消費額(8.1兆円)のうち百貨店の免税売上高は0.65兆円と10%未満だ。百貨店の免税売上高だけでインバウンド消費のトレンドを判断するのは早計だ。